腹痛
呼吸回数が多いときには(>30回/分)急性冠症候群、大動脈解離、肺塞栓、緊張性気胸、特発性食道破裂、心膜炎、胸膜炎等胸腔内疾患も鑑別します。有名なコープ急性腹症早期診断の教科書にも記載されています。次に手術の必要な疾患を判断します。虫垂炎(腹部の緊急手術の約半数、医者を謙虚にする病気、①食欲不振、②上腹部痛、③吐き気、④右下腹部に痛みが移動、⑤発熱の順番に症状出現、治療法がなかった時代には汎発性腹膜炎に至れば敗血症で皆亡くなった、近代医療に感謝)、消化管穿孔、急性膵炎、胆石疾患、腸閉塞、急性腸管虚血、虚血性腸炎、大動脈瘤破裂、腎梗塞、結腸憩室炎、腹膜垂炎、外妊、卵巣腫瘍の捻転、卵巣出血、急性副腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス等。
大腸がんによる腸閉塞は30歳未満に発症することはめったに無く、30歳代では稀にみる程度です。急性膵炎も20歳未満は稀です。胃潰瘍穿孔も15歳未満では殆どみられません(十二指腸潰瘍穿孔は稀にはみられます)。胆嚢炎や卵巣のう腫捻転も通常は成人に多いです。発症が急激であれば重篤な病変の可能性があります。胃や十二指腸潰瘍穿孔、急性膵炎、腹部大動脈瘤破裂、女性では子宮外妊娠による卵管破裂は失神を伴うことがあります。腸閉塞は多くの場合、腹痛が緩徐に発症して次第に増強し、最終的に激しい疼痛になりますが、絞扼性イレウスや卵巣のう腫茎捻転では発症初期から腹痛は激しいことが普通です。発症早期の腹部全体痛は腹腔内に突然、血液(子宮外妊娠の卵管破裂)、膿(卵管稽留腫の破裂)、腸内容(消化管穿孔)を考えます。胆石仙痛は右肩甲骨下角直下に、腎疝痛は同側の会陰部や精巣に放散することがあります。