メニュー

膵のう胞性腫瘍

[2018.07.08]

膵管内乳頭粘液性腫瘍、IPMN(intraductal papillary mucinous neoplasm)は偶然発見される上皮性腫瘍性膵のう胞のなかで最も多いとされます。高齢男性の膵頭部や体部に好発します。多くは多房性で共通の皮膜を有さず、ぶどうの房状の形態を呈します。主膵管と交通があります、主膵管径は拡張していることも拡張していないこともあります。悪性を強く疑う所見は①閉塞性黄疸を伴う膵頭部ののう胞性病変、②造影される5mm以上の充実性成分、③主膵管径≧10mmが、また悪性の可能性がある所見は①のう胞径≧3cm、②造影される壁肥厚、③主膵管径5~9mm、④5mm未満の壁在結節、⑤尾側に閉塞性膵炎を伴う主膵管狭窄等が挙げられます。そのため、のう胞径≧3cmや主膵管径5~9mm等悪性の可能性のある所見を認める場合には、超音波内視鏡検査で壁在結節やその造影効果の有無を検索します。IPMNは同時性、異時性に通常型膵癌を合併する頻度が高く、IPMNの癌化だけではなく、通常型膵癌の合併にも注意が必要です。IPMN悪性の可能性のある所見を認めない場合でも通常型膵癌合併検索のための超音波内視鏡検査の合理性も検討されています。

 

粘液性のう胞腫瘍、MCN(Mucinous cystic neoplasm)は紡錘状細胞が比較的密に増生する卵巣様間質を有し、粘液を産生する上皮で構成される類円形の、のう胞性腫瘍で、中年女性の膵体尾部に好発します。次に記載するSCNと比べると頻度は低いです。のう胞全体を包むやや厚い繊維性被膜を有し内腔に凸の、のう胞内のう胞を有するオレンジのような形態が特徴です。隔壁で分かれたのう胞腔は各々独立していて、交通はありません。造影にて遅延性の濃染を示します。被膜や隔壁には石灰化を伴うことがあります(卵殻様石灰化)。また主膵管との交通も認めません。耐術性症例では原則手術適応と考えられています。

 

漿液性のう胞腫瘍、SCN(Serous cystic neoplasm)は中年女性に好発します。グリコーゲンに富む淡明な細胞で構成される立方上皮に覆われ、内腔が漿液に満たされた多発のう胞よりなる腫瘍です。膵腫瘍全体の1%前後を占める比較的稀なのう胞性腫瘍です。微小のう胞の集簇であるmicrocystic type が典型例です。微小のう胞の集簇は蜂巣状構造(honeycomb appearance)と形容されますが、のう胞間隔壁は造影剤で早期濃染します。中心部が繊維化、石灰化することによる星茫状の瘢痕(central stellate scar)や中心石灰化(sun-burst appearance)が見られることもあります。画像または肉眼でのう胞構造を認識し難い充実型は造影CTで早期から濃染される多血性腫瘍として描出されるので膵神経内分泌腫瘍に酷似しますが、超音波内視鏡検査で膵神経内分泌腫瘍は低エコー腫瘤に対してSCNは髙エコー腫瘤として描出されますので、鑑別が可能です。主膵管との交通は認めません。良性のことが多く原則経過観察します。

 

充実性偽乳頭状腫瘍、SPN(Sorid-pseudopapillary neoplasm)は若年女性に好発する低悪性度の腫瘍です。膵腫瘍全体の1%前後、のう胞性膵腫瘍の3%前後を占める比較的稀な腫瘍です。結合性の弱い多形成(分化方向が不明、免疫組織化学検査では細胞質や核にCD10やβ-カテニン、NSE、Vimentinが陽性、chromogranin Aは陰性となることが多いです)腫瘍細胞が微細な血管間質を取り囲み充実性に増生する腫瘍で、しばしばのう胞変性や出血を伴います。割面は厚い繊維性偽被膜の中に、充実性の部分と出血と泥状液体貯留の混在した偽のう胞部分が混在していることが多いです。膵外側に膨張性に発育する境界明瞭な球状腫瘤で、内部は充実性部分とのう胞状部分が不均一に混じり、充実性部分は漸増性の造影効果を示すことが多いです。また腫瘍辺縁や内部に粗大な石灰化を伴うことがあります。主膵管との交通は認めません。大部分が良性に近い生物学的態度を示します。

 

膵神経内分泌腫瘍のうちのう胞成分を伴うcystic PNET(cystic pancreatic neuro-endocrine tumor)は膵尾部に好発します。類円形腫瘍のなかにのう胞部分を伴い、辺縁の充実性部分は造影で早期濃染を示します。のう胞部分は単房性で大きなものでは出血を伴うこともあります。石灰化はみられません、主膵管との交通も認めません。膵内分泌腫瘍は核分裂数(少なくとも高倍率視野を50視野以上検討し、10髙倍率視野当たりの核分裂数)ないしKi67指数による細胞増殖能(最も核の指標率が高い領域で500から1000個の腫瘍細胞に占めるMIB-1抗体の陽性率)をもってNET G1(核分裂数が<2個/10HPFないしKi-67指数が≦2%)、NETG2(核分裂数が2から20個/10HPFないしKi-67指数が3から20%)、NEC(核分裂数が>20個/10HPFないしKi-67指数が>20%)にグレード分類されます。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME