胃カルチノイド
本邦の胃癌取り扱い規約第15版によれば内分泌細胞癌、リンパ球浸潤癌、胃底腺型胃癌等とともに悪性上皮性腫瘍の特殊型に分類されています。カルチノイド腫瘍と内分泌細胞癌は異型度が違うだけではなく、発生、腫瘍細胞の特性、分化の種類が異なると考えられています。胃カルチノイドの多くはECL(enterochromafin-like)細胞に由来し、持続的な髙ガストリン血症によるECL細胞の過剰増殖が本腫瘍の発症に関与すると考えられています。この内分泌細胞は腺底部に存在するため、カルチノイド腫瘍は粘膜深層から発生し粘膜下腫瘍の形態を呈することが多い上皮性腫瘍です。一方、内分泌細胞癌は先行した粘膜内髙、中分化型腺癌の癌腺管深部に腺癌細胞の脱分化により出現した増殖能の高い腫瘍性内分泌細胞の塊状増殖により、腺内分泌細胞癌を経て形成される場合が最も多いとされています。
胃カルチノイド腫瘍はRindiらの分類では背景病変によって①TypeⅠ:自己免疫性胃炎(A型胃炎)に伴い発症するもの、②TypeⅡ:多発性内分泌腺腫瘍(multiple endocrine neoplasia:MEN)-1型およびZollinger-Ellison症候群に合併するもの、③TypeⅢ:高ガストリン血症や特異的胃炎を背景とせず散発的に発生するものの3群に分けられて、予後と相関するとされています。そして内分泌細胞癌を髙悪性度内分泌腫瘍として別個に位置づけています。
胃カルチノイド腫瘍の内視鏡的特徴は腫瘍が小さいときにはやや平坦な隆起性病変ですが、大きくなると前述のように表面が平滑な粘膜下腫瘍様の隆起です。やや黄色調で、表面に拡張した血管を伴います。腫瘍径が大きくなると、頂部に陥凹やびらん、潰瘍が形成され腫瘍が露出しますので、表面構造は消失して細く密ならせん状血管と太く拡張した黒褐色の血管が不規則に樹枝状に分岐します。
カルチノイドの診断には内分泌マーカーの免疫組織化学染色が用いられます。chromograninA染色は特異的ですが感度が低く、synaptophysin染色は逆に感度が高いですが特異度は低いです。悪性度指標のひとつに細胞分裂像やKi67免疫染色指数による細胞増殖能判定があります。