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検査所見の説明

プロカルシトニン

全身性炎症反応症候群(SIRS)の中で感染が原因となる病態である敗血症(sepsis)でより特異的に反応するマーカーです。CRPやIL-6などの既存の炎症性マーカーは非感染性の炎症でも増加しますが、プロカルシトニン及びプレセプシンはより特異性に優れ、非感染性炎症では増加しないことが多いです。敗血症の鑑別に有用で、また病態の重症度も鋭敏に反映します。これを要するにプロカルシトニンとプレセプシンは細菌感染症の鑑別とその重症度判定に優れた検査項目です。

CRP

CRPは肺炎球菌のc-polysaccharideを沈殿させる蛋白として発見されました。IL-6が誘導してIL-1が増強します。炎症部位が限局してサイトカインが肝に運ばれなければCRPは上昇しません、例えば頭蓋内に限局した炎症や被包化された膿瘍、腸ねん転での腸管壊死などでは局所のサイトカインが肝に到達せずCRP上昇が見られません。CRP産生と連動してアルブミン産生は抑制されますのでCRP値とアルブミン値は逆相関します。炎症性アミロイドはアミロイドーシスの原因となりますがアミロイドーシスのリスク予知のためCRPをモニターします(家族性地中海熱では解熱時にはCRPも改善しています)。CRPは組織障害の発生後4から6時間で上昇し、1日から3日でピークに達します。すなわち急性炎症では発症当日にCRPは反応して上昇します。CRPはIL-6刺激によって産生維持されますので炎症が収束すれば数日で急速に正常化します。脱水状態ではCRP上昇は増強されます。高熱でも頭蓋内に限局した炎症(髄膜炎、脳炎)、SLE、強皮症ではCRPが陰性のこともあります。

HbA1c

ヘモグロビンにグルコースが非酵素的に結合(糖化)したものがHbA1cです。この検査は、グルコースは自由に赤血球膜を通過できること、赤血球内にはグルコースが結合する相手であるヘモグロビンが十分量存在することにより、ヘモグロビンの糖化はグルコース濃度に依存することを利用したものです。赤血球の寿命を考慮すると、HbA1cの血中(赤血球内)濃度は過去1~2ヶ月間の血糖コントロール状態を反映すると考えられています。HbA1cを低下させると糖尿病の慢性合併症の発症や進展に対して好影響を与えるという種々のエビデンスが報告されています。糖尿病は持続する高血糖状態であることより血糖値と同時にHbA1cを測定することにより糖尿病の診断に用いられています。出血や溶血などにより赤血球寿命が短縮した場合や鉄欠乏性貧血に対する鉄剤や腎性貧血に対するEPO製剤、悪性貧血に対するVB12の治療による赤血球産生亢進状態ではHbA1cは低値になります。

ナトリウムとカリウム

低ナトリウム血症の臨床症状は無気力、筋力低下、嘔気嘔吐、食欲低下、興奮、見当識障害などです。転倒リスクが高まります。原因は水分の排泄障害(有効動脈容量の減少、抗利尿ホルモンの不適切分泌、腎不全、その他副腎不全など)と水分の過剰摂取(心因性多飲)があります。

髙ナトリウム血症の臨床症状は口渇、意識障害、せん妄、昏睡等の神経症状です。低ナトリウム血症と比べるとそれほど多い頻度ではありません。原因の多くは水分の不足(大量の発汗、下痢、嘔吐や尿崩症、浸透圧利尿)です。

高カリウム血症の臨床症状は消化器症状として悪心嘔吐、神経筋症状として四肢や骨格筋のこわばり、四肢知覚異常、筋脱力感、弛緩性麻痺(下肢から始まり上行性に広がる)などです。高カリウム血症では危険な不整脈が出現するので心電図を記録する必要があります。糖尿病では腎機能低下が軽度でも高カリウム血症をきたすことがあります。カリウムは細胞内に最も多い陽イオンで、細胞内外の濃度差は約40倍です。溶血などの細胞融解で髙カリウム血症になりやすいのはこのためです。横紋筋融解や腫瘍崩壊症候群などに伴うものは緊急対応が必要です。薬剤が原因となることも多く減量や中止も検討します。低カリウム食の栄養指導も有効です。

低カリウム血症の臨床症状は脱力感、筋力低下(下肢から始まり上行性に広がる)や筋肉痛、倦怠感、便秘や多尿、麻痺性イレウスなどです。不整脈やテタニー、横紋筋融解も引き起こすことがあります。原因はカリウム摂取不足、下痢疾患による腸管からのカリウム喪失、薬剤や疾患による腎からのカリウム喪失、細胞増殖や甲状腺疾患に伴う細胞内へのカリウムの移動などです。

CPK

筋肉や脳に多量に存在しているため、心筋梗塞や筋疾患、中枢神経疾患での臨床的意義が高いです。日常的には運動後や筋肉注射、こむら返りが原因での上昇の頻度が高いですが、種々のミオパチー(インフルエンザ罹患後、熱中症、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、急性副腎不全、低カリウム血症、高度の脱水、薬剤性等)の可能性にも注意します。

ALP

血中に検出されるものは肝、胆道、骨、骨盤、小腸に由来します。肝、胆道疾患(原発性胆汁性肝炎や肝結核、サルコイドーシスなどのびまん性肝疾患や薬剤性肝障害、閉塞性胆道疾患)や骨疾患(骨軟化症のほか骨代謝に影響を及ぼすところの甲状腺機能機能亢進症副甲状腺機能亢進症、骨腫瘍や骨転移)で髙値となる他、小児は骨成長のためALPが上昇します。

LDH

細胞の可溶性分画に存在するため、細胞の障害時に直接、もしくはリンパを経由して血管内に流入する所謂逸脱酵素です。殆どの細胞障害時に上昇します。特に大きな組織の障害や血球細胞の破壊で上昇します。障害の重症度とLDH上昇の程度も相関します。他の逸脱酵素に比してLDH上昇の目立つ病態は悪性貧血や溶血性貧血、白血病やリンパ腫等の血液疾患、腎梗塞や間質性肺炎、セミノーマなどが知られています。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は脳下垂体前葉のTSH産生細胞で合成、分泌される糖蛋白ホルモンで、その分泌調節は血中遊離甲状腺ホルモン(fT4)との間の負の反回調節や視床下部から分泌されるTSH分泌刺激ホルモンやその他の調節因子によりなされます。TSHはfT4と逆相関の関係にあります。甲状腺機能亢進症でfT4が上昇する状態ではTSHが抑制され、原発性甲状腺機能低下症ではTSHが上昇します。T4があるレベルに上昇すると突然TSHが抑制され、逆にT4があるレベルに低下するとTSHは急激に分泌促進されます。このT4のあるレベルのことをset pointといいますが、個人間レベルで異なる値をとります。TSHはT4のわずかな変化でもT4の数十倍の変化を示しますので、甲状腺機能状態を把握するためのthe single best検査項目です。甲状腺機能状態の重症度はT4で把握します。バセドウ病ではほぼすべて測定感度以下まで抑制されます。対して亜急性甲状腺炎では測定感度内低値を示すことが多いです。

血清フェリチン値

フェリチンは鉄を結合して貯蔵するための蛋白で肝、脾臓、骨髄、骨盤などの組織に広く分布しており、その分布量はおおむね血清値と相関します。鉄貯蔵マーカーとして利用されています。鉄貯蔵量の低下に応じて血清フェリチン値も低下します。鉄剤投与は血清フェリチン値の是正を目標にします。肝炎や他の炎症性疾患、悪性腫瘍でもしばしば髙値を示しますが疾患特異的な意義は乏しいです。ですから異常低値は鉄欠乏製貧血や造血が急速に回復、亢進して鉄利用率が上昇した病態です。異常髙値を示すのは①鉄利用が障害される再生不良性貧血や骨髄異型性症候群のような造血障害、②ヘモクロマトーシス、ヘモジデローシス、③肝細胞破壊による肝組織からの逸脱、④スティル病などの自己免疫性疾患やその他慢性炎症、⑤造血器腫瘍その他の悪性腫瘍、⑥血球貪食症候群、等です。

鉄欠乏性貧血に慢性炎症性疾患を合併した場合は血清フェリチン値のカットオフ値は100ng/ml程度まで上昇します。

NT-prBNP

心臓で分泌されるホルモンで、主に心筋の壁応力によって合成、分泌が調節されています。したがってその血中濃度は心機能障害、特に左室拡張末期圧の上昇や心拍出量の低下に応じて上昇します。心筋ストレスも重要な合成、分泌の促進因子です。代謝、排泄経路はすべて腎臓であるため、心機能のみならず腎機能評価も併せ持つマーカーです。心不全の程度に応じて上昇しますし、心不全症状を認めなくても心筋症、心房細動などの不整脈、心臓弁膜症でも上昇することがあります。肺動脈血栓塞栓症や原発性肺高血圧、慢性呼吸器疾患に伴う右室負荷に伴う右心不全では右室拡張末期圧の上昇に応じてNT-prBNPは上昇します。急性冠症候群での上昇は、心筋虚血ストレスもしくは虚血が引き起こす左室拡張末期圧上昇に伴う分泌亢進を反映しています。

頚静脈怒脹

右心不全徴候の特徴的な所見です。中心静脈圧が正常の時は、頚静脈は仰臥位では右心房の高さとほぼ同じですので、頚静脈が拡張して見えます(外頚静脈は胸鎖乳突筋の表層を走行します)。仰臥位でも頚静脈が虚脱していたら出血や脱水でかなり血管内容量を失っていることになります。対して座位や立位では正常圧の時には頚静脈は虚脱します。座位での頚静脈怒脹は中心静脈圧の上昇を現しており強い異常所見です。

血圧は血圧計で測れますが静脈圧は血圧計では測れません。きちんと測る場合は内頚静脈で測ります。外頚静脈でも圧が高いか低いかは分かりますが、正確にはより右心房に近く右心房圧を反映する右の内頚静脈で測定します。内頚静脈は胸鎖乳突筋の深層を走行しますので外表から直接みえませんので拍動を観察します。右心房から胸骨角までの垂直距離は5cmです。内頚静脈の拍動の頂点から胸骨角までの垂直距離+5cmが内頚静脈圧を示しています。

消化管生検のGroup分類

胃癌取り扱い規約第15版

Group1 は正常組織および非腫瘍性病変

Group2は腫瘍性(腺腫または癌)か非腫瘍性か判断の困難な病変

Group3は腺腫(良性腫瘍)

Group4は腫瘍と判断される病変のうち、癌が疑われる病変

Group5は癌

 

大腸癌取り扱い規約第8判

Group1 は正常粘膜および炎症性粘膜や過形成結節

Group2は腫瘍性(腺腫、腺癌)か非腫瘍性か判断が困難な病変

Group3は細胞異型および構造異型の点で幅のある病変が含まれる、良性腫瘍など

Group4は癌を疑うが確定できないもの

Group5は癌

たこいぼびらん

胃幽門前提部に好発します。びらん周囲の粘膜固有層(腺管と腺管の間、間質)に粘膜筋板から伸びてきた筋繊維が縦に走るため、びらん周囲の再生粘膜が隆起します。たこの吸盤に似ていることから名づけられました。中心の陥凹は発赤調で白苔を伴うこともあるが蚕食像などの悪性所見は認めません。

腸上皮化生

腸上皮化生はピロリ菌感染などにより胃粘膜上皮がびらんと再生を繰り返すうちに腸管粘膜上皮の形態に変化した状態です。環境への適応反応と考えられています。腸上皮化生は細胞組成から完全型と不完全型に分類されています。完全型は吸収上皮と杯細胞、パネート細胞から成り、刷子縁様構造を伴い小腸粘膜と同じ形態と構造を持ちます。不完全型はパネート細胞を欠き胃と腸の細胞が混在する胃腸混合型の腸上皮化生と考えられています。腸上皮化生はピロリ除菌後でも観察され長期間にわたり残存します。腸上皮化生の内視鏡的所見としての典型像は前庭部を中心に散在する灰白色の扁平隆起ですが、除菌後の粘膜の特徴的な所見である地図状発赤も腸上皮化生であることが多いです。

RAC

ピロリ菌未感染の正常胃では胃体部の胃底腺領域に集合細静脈が規則的に配列する像が胃カメラで観察されます。その内視鏡像をRAC(regular arrangement of collecting venules)といいます。遠景では規則的な沢山の点として認め、また近景ではヒトデ状の模様の整然と配列するさまをregular arrangement と形容されています。RAC像が胃体部全体に観察される場合はピロリ菌未感染の正常胃粘膜と判定されます。ピロリ菌感染による慢性炎症で粘膜が発赤するとRACは観察されなくなります。

食道のグリコーゲン・アカントーシス

グリコーゲン・アカントーシスはグリコーゲンを含む扁平上皮の過形成です。中年男性に多く症状をきたすことはありません。中部食道に多発する類円形の2から10mm前後の大きさの平板状の隆起です。上部消化管内視鏡検査の10%前後の頻度で認められます。病因は不明ですが逆流性食道炎との関連性が示唆されています。病理組織像では明るく豊富な細胞質を有する有棘細胞層の増生を伴う粘膜上皮の肥厚性変化です。異常に多発する場合はCowden病を鑑別します。内視鏡所見は多発する半透明の白色調平板状小隆起で、表面に微細顆粒を認めます。ヨード染色では境界明瞭な褐色調の濃染像を呈し内部に点状の不染が観察されます。拡大観察では増生した有棘細胞による粘膜上皮の肥厚性変化による血管透見不良を認めます。

繊維筋症

消化管粘膜固有層の線維筋組織の増生です。粘膜固有層の間質に粘膜筋板の肥厚、不規則な立ち上がりからなる平滑筋成分および線維芽細胞などの線維性分の混合した成分として観察されます。直腸粘膜脱症候群や幽門側胃切除術のB-II再建残胃吻合部にも認められます。

腸間膜付着側・付着対側

腸間膜付着側に病変を認める代表的疾患はCrohn病が挙げられますがその他の疾患はたいてい付着対側に病変を認めることが多いです。付着対側にはパイエル板が存在し、感染性症腸疾患の多く(結核やチフス、エルシニア等)、腸管ベーチェット病や単純性潰瘍はパイエル板から初期病巣が生じるため付着対側に病変を認めます。また血流障害によって生じる虚血性小腸炎でも血管から遠い位置の付着対側に主な潰瘍性病変を認めます。

LEL(lymphoepithelial lesion)

増殖したリンパ腫細胞が3個以上の小集簇を呈して粘膜上皮や腺管部に浸潤し、浸潤部の腺管の変型、破壊をきたしている所見です。主として腺窩上皮に認められるが胃底腺組織に認める場合もあります。浸潤細胞がB細胞性であることをCD20の免疫組織化学染色で確認します。LELによる上皮の破壊が顕著の場合には上皮は断片化して印環細胞がん細胞との鑑別が必要となります、サイトケラチンの免疫染色が有用です。粘膜上皮間に存在するT細胞リンパ球をIEL(intraepitherial lymphocytes)といいますがIELの増加はセリアック病リンパ球性大腸炎等に特徴的です。

 
 
 
 

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