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一般的な感染症

一般的な感染症

かぜ症候群

EBやサイトメガロ、単純ヘルペス、HIVやウイルス肝炎の初期も同様の症状を呈します。自然治癒しますので、抗菌薬のむやみな使用は効果よりも副作用の弊害のほうが大きいです。

溶連菌による急性咽頭炎

急性の発熱、咽頭痛、嚥下痛、圧痛のある前頚部リンパ節腫脹、へんとうの腫脹と白苔、はなと咳を欠く、が特徴です。ペニシリンで治療します。鑑別疾患は異型リンパ球と肝機能異常が出現する伝染性単核球症です。若年のEBウイルス、中年はサイトメガロウイルスが原因で、亜急性の経過が一般的で、ペニシリンは効果が無いばかりか皮疹の副作用が必発です。

市中肺炎

肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマが三大起炎菌です。誤嚥性肺炎では口腔内嫌気性菌の関与が大きいです。

膀胱炎

単純性膀胱炎は下腹部の不快感や痛み、頻尿、残尿感、排尿痛などの膀胱刺激症状を呈します、発熱は通常認めません。女性の場合は膣炎を除外します(膣炎は排尿後に痛みます、膀胱炎は排尿直前から排尿中に痛みます、膣炎は膀胱炎よりも頻度が高いです)。起炎菌は大腸菌が80%、肺炎桿菌、プロテウス等の腸内細菌、Staphylococcus saprophyticus が続きます。第1から2世代セファロスポリン系、その他ST合剤、ホスホマイシン等の内服治療をします。

急性腎盂腎炎

急性腎盂腎炎は発熱、悪寒、時に戦慄を伴い、側腹部痛、背部痛とともに吐き気や嘔吐を呈することもあります。尿は混濁して血尿を呈することもあります。軽症であれば5日間程度の抗生剤点滴後内服薬に引き継ぎます。抗生剤開始後3日目までは熱が持続することも多いです。三日間で解熱しないときには、尿路の狭窄、閉塞による腎膿瘍、腎周囲膿瘍の合併も危惧されるため腹部エコーや造影CT検査も必要です。尿路の閉塞が関与する膿瘍、周囲膿瘍では細菌尿を呈さないことがあります。複雑性病態では緑膿菌やセラチア、腸球菌等の関与も疑います。

前立腺炎

治療期間が長いので泌尿器科専門診療が必要です。高齢者では多くは腸内細菌が起炎菌です。

感染性下痢症

普通は数日で軽快しますので一週間以上続く時には原虫、寄生虫、HIV、薬剤含めて鑑別します。抗菌剤が必要なときはキノロン系やST合剤、ホスホマイシンが使いやすいです(嫌気性菌への抗菌力が乏しいので腸内細菌叢を乱しにくい)。旅行者下痢症は症状が強ければキノロンを内服します。サルモネラは主な感染源は鶏肉、鶏卵です。抗菌治療が必要な場合はキノロン内服かロセフィン点滴を単独か併用します。カンピロバクタは潜伏期間が一週間程度まで比較的長いです、近年は感染性下痢症原因菌の最上位です。必要時マクロライド系抗生剤を選択します。腸管出血性大腸菌腸炎は3類感染症に指定されています。抗菌剤関連下痢症の一定割合をディフィシル菌感染症(CDI)が占めます。フラジール内服が第一選択剤です(重症、再発例はバンコマイシンやフィダキソマイシンを併用します)。赤痢アメーバランブル鞭毛虫などの原虫にもフラジール内服治療します。

主な起炎菌

ブドウ球菌

皮膚、鼻腔、咽頭などの通過菌(手洗いで除去できる)です。皮膚軟部組織感染症、手術部位感染症、血管カテーテル関連感染症、感染性心内膜炎、骨髄炎などの原因となります。外来ではセファメジンか重症例では迷わずVCMで治療開始します。

CNS

皮膚の常在菌(消毒薬による手洗いで除去しきれない)です。血管カテーテル由来感染、尿路感染(対してブドウ球菌は尿路感染の起炎菌にはなりません)、きわめて稀には免疫能低下時の肺炎の起炎菌となりえます。疑えば迷わずVCMです。

溶連菌

咽頭炎や丹毒ではペニシリンかアレルギーがあればマクロライド系を用います。

肺炎球菌

市中肺炎の主要起炎菌です。肺炎球菌肺炎はたいてい急性発症で発病初期に悪寒、戦慄、発熱、咳嗽、胸痛などを認めます。脾摘後では重症化するので肺炎球菌ワクチンが保険適応となっています。十分量のペニシリン内服で加療開始します。

腸球菌

セファロスポリン系に耐性、ペニシリンに感受性あり

ぺプトストレプトコッカス

市中の誤嚥性肺炎の三大起炎菌のひとつ

モラキセラ

肺炎球菌、インフルエンザ菌と並んで普遍的な呼吸器感染の起炎菌です。マクロライドに感受性あり、セファメジン(第一世代セファロスポリン)耐性です。

インフルエンザ菌

市中肺炎の三大起炎菌のひとつです。軽症ではジスロマック一回内服、重症ではロセフィン点滴します。第一世代セファロスポリンは効果が弱いので用いてはなりません。

大腸菌

尿路感染の代表的な起炎菌ですがキノロン耐性が進んでいます。

肺炎桿菌

尿路感染の起炎菌です。健常者は肺炎を起こしません。糖尿病、アルコール多飲、肝硬変に肺炎を引き起こします。セファロスポリン系で治療します。

代表的な抗生剤

天然ペニシリン

今なお肺炎球菌、レンサ球菌の第一選択薬です。おなかの嫌気性菌には無効です。

半合成中域ペニシリン

大腸菌やインフルエンザ菌にも効果のある画期的な薬でしたが残念ながら耐性菌が増えています。

半合成ペニシリンとβラクタマーゼ阻害剤との合剤

おなかの嫌気性菌や誤嚥性肺炎にも効果があります。

経口ペニシリン

サワシリンは多くの外来感染症に第一選択薬となる主要薬剤です。

第一世代セファロスポリン

レンサ球菌、肺炎球菌に加えて大腸菌、肺炎桿菌にも適応範囲が拡大し、多くの疾患で第一選択薬となりえます。

第二世代セファロスポリン

インフルエンザ菌にも効果があります。嫌気性菌への有効性で二つのグループに分けられます。

第三世代セファロスポリン

グラム陽性菌には弱いです。ただしロセフィンはペニシリン耐性肺炎球菌に用いることができます。緑膿菌への有効性で二つのグループに分けられます。

経口セファロスポリン

第一世代はブドウ球菌に対する内服の第一選択薬です、かつては多くの市中感染症で第一選択薬でしたが、耐性のブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌の増加により出番が少なくなっています。第二世代は大腸菌、肺炎桿菌に対する内服の第一選択薬です。通常のインフルエンザ菌、モラキセラへの効果も十分です。口腔、上気道の嫌気性菌にも適応がありますが、お腹の嫌気性菌には無効です。緑膿菌に有効な経口薬はありません。

マクロライド

最も安全な抗菌薬のひとつです。アレルギーの可能性はβラクタム剤に比べると著しく低いです。マイコプラズマ、クラミドフィラ、カンピロバクタ、モラキセラ、レジオネラ、リケッチアに有効です。

ホスホマイシン

単純な構造式で抗原性が少なくアレルギーはまずありません。抗菌力はやや弱いですが、尿路感染症の主なグラム陰性桿菌のすべてに有効で、緑膿菌やブドウ球菌、サルモネラカンピロバクタにも効力があり、特異なスペクトラムを持ちます。

ST合剤

緑膿菌、嫌気性菌には自然耐性で無効です。

メトロニダゾール

嫌気性菌に有効な抗菌薬です。ディフィシル菌赤痢アメーバランブル鞭毛虫にも保険適応です。ピロリ菌の二次除菌治療にも用います。副作用は消化器症状です。

キノロン

緑膿菌に有効な唯一の内服薬です。嫌気性菌には弱いです。非定型肺炎の原因菌であるマイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラに効果があり肺炎球菌にも有効なキノロンも開発されましたが出来るだけ切り札として温存すべき薬剤です。

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