虫垂炎
腹部の緊急手術の約半数を占める疾患です。リンパ組織の肥厚や糞石、時に腫瘍や異物で虫垂の内腔が閉塞することによって発症します。内科外来受診者の問診では20人に1人ぐらいは虫垂炎の手術歴があるくらいにとても一般的は疾患です。症状は典型例では半日から2日間程度の間に①食欲低下、②だんだん増悪する間歇的な心窩部痛、③悪心、嘔吐、④痛みが右下腹部に移動、⑤発熱が①から⑤の順番に出現します(有名な教科書、コープの急性腹症にも記載されています)。②の心窩部痛を自覚せずに食欲低下、悪心嘔吐の後に右下腹部痛で発症する場合もあります。時には急激に進行して穿孔による突然の腹痛で発症したり、逆に慢性の経過で巨大な腫大虫垂炎で診断されることもあり、非典型例にも注意が必要です。一般的には発症2から3日も経過すると虫垂穿孔することが多いです。穿孔により虫垂の強い緊満が解除され、それまでの痛みが少し改善された後に高熱や激しい持続性の痛みが増強してくる場合は汎発性腹膜炎に陥っている可能性が高く、迅速で適切な治療がなされない場合は敗血症から死にいたる危険が高いです。穿孔はしたが虫垂穿孔部周囲が腸間膜や盲腸、回腸等の臓器で覆われている場合は限局的膿瘍形成に至ります。虫垂周囲が炎症性に肥厚して一塊となり隔壁はあるが膿瘍形成に至らない場合は蜂窩織性と称します。早期の虫垂切除術は避けて膿瘍があれば可能なら経皮的なドレナージを施行して、抗生剤治療を優先します。