ピロリ菌未感染早期胃がん
ピロリ菌未感染胃がんの頻度は1%前後と考えられています。
低分化型などのほかの組織型を伴わない印環細胞がんのみで構成されるがんでその特徴は①胃底腺と幽門腺の境界領域(胃角部を中心に胃体下部から前庭部の全周)に好発する、②内視鏡の色調は褪色調、③肉眼形態は平坦型、④腫瘍径が小さい粘膜内がん、です。特に粘膜内がんが大半であることが大きな特徴です。ピロリ感染の印環細胞がんに比して細胞増殖能が低いと考えられています。多くの病変が粘膜の中層、もしくは中層から上層にかけて発育し、全層性に発育するものは少ないことが知られています。しかし粘膜深層に未分化成分を混じるようになると浸潤も出現するようになると考えられています。
その他の組織型として胃底腺型胃がんがあります。細胞のムチンコア蛋白に対する免疫組織染色検査で細胞形質の発現が分類されますが、正常胃底腺粘膜は表層から順に腺窩上皮(MUC5AC陽性)、頚部粘液腺(MUC6陽性)、胃底腺(表層は壁細胞優位でH+/K+-ATPase陽性、深部では主細胞優位でペプシノゲンⅠ陽性)から構成されますが、胃底腺型胃がんでは免疫染色で胃底腺マーカー(壁細胞H+/K+-ATPase、主細胞ペプシノゲンⅠ)が陽性となる腫瘍と定義されています。頚部粘液腺マーカーのMUC6も陽性となることから、頚部粘液腺から発生、分化する未熟な主細胞から成る腫瘍と考えられています。表層部は非腫瘍性の腺窩上皮(MUC5AC陽性)で覆われていますので、表層部に腫瘍の露出がなく、①内視鏡的には腫瘍性変化に乏しく粘膜下層に厚みがある平坦粘膜、②褪色ないし白色の色調、③拡張進展した血管が表面を走行することが特徴と考えられています。
その他、噴門部がんやバレット上皮に由来することが病理学的に証明困難な食道胃接合部がんもピロリ菌未感染胃に出現することがあり、酸逆流関連が示唆されています。