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腸結核

[2018.08.17]

腸結核は抗酸菌の一種であるヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による腸管感染症です。肺病変がない一次性(原発性)、肺結核感染病巣から腸に感染する二次性(続発性)がありますが、近年では一次性が多いとされています。ほとんどは排出された菌が喀痰とともに嚥下されて感染する管内性感染と考えられていますが、血行性、リンパ行性、隣接臓器からの直接感染もあります。菌体は細胞壁成分に脂質を多く含み胃液や腸液の酸やアルカリに抵抗性で主にパイエル板や孤立リンパ小節が発達した回盲部に侵入し初期病巣を形成し感染が成立します。M細胞を介して粘膜下のリンパ組織に侵入した菌体は最初期病変として粘膜内に乾酪性肉芽種を形成します。粟粒大ないしは麻実大の粘膜の隆起は結核結節の壊死物質が被覆粘膜を決壊して腸管内に排出されアフタ、びらんを形成します。病変は癒合してリンパ流に一致した不整形、不整な分枝状、横長、輪状、帯状、地図上の潰瘍となりますが、アフタやびらんから潰瘍に進展しない事もあります。潰瘍はリンパ組織の炎症の二次的変化で、基本的には周囲粘膜の変化は軽微です。潰瘍底は白苔が薄く結核結節や肉芽組織が凸凹の発赤調に透見される事もあります。結核は自然治癒傾向がある為、潰瘍辺縁に発赤調の再生成変化も認めます。治癒傾向を反映した潰瘍周囲の多中心性の瘢痕や瘢痕萎縮帯、炎症性ポリープが混在する多彩な病変を呈することが多いです。鑑別疾患はCrohn病です。Crohn病では縦列アフタや縦走潰瘍で(まれには縦走潰瘍の口側に輪状潰瘍が存在することもあり)、瘢痕による腸管の変形も非対称で縦走傾向です。腸結核では回腸病変はリンパ装置の多い腸間膜付着対側(内視鏡で正面視観察しやすい側)に多いです。診断は病変部の結核菌の証明が必要です。生検組織の培養や抗酸菌染色での同定は感度が低く陽性率は10%以下とされています。組織学的には類上皮細胞、ラングハンス型巨細胞から形成される肉芽種が特徴的で、最外層にリンパ球冠を、中心部に乾酪性壊死を伴う肉芽種は結核に特異的な病理所見ですが粘膜下層以深のむしろ漿膜下層に存在することが多いため、生検は潰瘍底部からの組織採取が重要ですが検出は困難とされています(治癒期には肉芽種を認めることも少なく、また粘膜層の肉芽種は非乾酪性ですが、大型で癒合傾向であれば結核を疑う所見と言われています)。遺伝子診断法である核酸増幅法も感度は高いですが死菌でも陽性となる為特異度は低いです。ツベルクリン反応やインターフェロンγ遊離試験も疑陽性、偽陰性がみられます。臨床症状や内視鏡所見等とも併せて総合的に診断します。

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