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消化器科の病気

次のような症状がある方は受診してください

pict_naishikyo嘔気、胸焼け、胃の不快感、吐血、食欲がない、体重減少、腹痛、血便、体がだるい、黄疸 など

一般的な病気

胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃ポリープ、胃がん、大腸がん、痔、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、過敏性腸症候群などの一般的な消化器疾患

当院の治療方針

胃や腸、肝臓、すい臓、胆のうなど、お腹の中のことなら何でもご相談ください。

最新式の設備で極力苦痛なく胃カメラ、大腸カメラ、腹部エコーの検査をお受けいただくことで、病気の早期発見につながることができると考えます。胃カメラは鼻から挿入する内視鏡設備も導入しておりますので、ご相談の上、最適な方法を選択していただけます。

皆様の身近なかかりつけ医として、ささいな症状であっても、お気軽にご相談ください。

腹痛

呼吸回数が多いときには(>30回/分)急性冠症候群大動脈解離肺塞栓、緊張性気胸、特発性食道破裂心膜炎、胸膜炎等胸腔内疾患も鑑別します。有名なコープ急性腹症早期診断の教科書にも記載されています。次に手術の必要な疾患を判断します。虫垂炎(腹部の緊急手術の約半数、医者を謙虚にする病気、①食欲不振、②上腹部痛、③吐き気、④右下腹部に痛みが移動、⑤発熱の順番に症状出現、治療法がなかった時代には汎発性腹膜炎に至れば敗血症で皆亡くなった、近代医療に感謝)、消化管穿孔、急性膵炎、胆石疾患、腸閉塞、急性腸管虚血、虚血性腸炎、大動脈瘤破裂、腎梗塞結腸憩室炎外妊卵巣腫瘍の捻転卵巣出血急性副腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス等。

大腸がんによる腸閉塞は30歳未満に発症することはめったに無く、30歳代では稀にみる程度です。急性膵炎も20歳未満は稀です。胃潰瘍穿孔も15歳未満では殆どみられません(十二指腸潰瘍穿孔は稀にはみられます)。胆嚢炎卵巣のう腫捻転も通常は成人に多いです。発症が急激であれば重篤な病変の可能性があります。胃や十二指腸潰瘍穿孔、急性膵炎、腹部大動脈瘤破裂、女性では子宮外妊娠による卵管破裂失神を伴うことがあります。腸閉塞は多くの場合、腹痛が緩徐に発症して次第に増強し、最終的に激しい疼痛になりますが、絞扼性イレウスや卵巣のう腫茎捻転では発症初期から腹痛は激しいことが普通です。発症早期の腹部全体痛は腹腔内に突然、血液(子宮外妊娠の卵管破裂)、膿(卵管稽留腫の破裂)、腸内容(消化管穿孔)を考えます。胆石仙痛は右肩甲骨下角直下に、腎疝痛は同側の会陰部や精巣に放散することがあります。

結腸憩室炎

憩室壁に小さな穿孔を起こしていると推測されています。憩室は後天的であるので中年以降の病で小児にはありません。食生活の欧米化に伴ってか20代での発症も珍しくなくなってきました。典型的には緩徐に始まる間歇痛です。吐き気や嘔吐はなく食べられるので発症数日での来院が多いです。高熱は珍しいです。肥満に多いです。明瞭な圧痛と反跳痛があります。通常は痛みは小児の握りこぶしかそれより小さい程度の範囲です。エコーで圧痛部に大腸から球状に突出する低エコー域を認め内部は髙エコーを呈します。虫垂炎が鑑別疾患ですが、虫垂炎は自発痛がより強く吐き気もあり食べられないことが多いです。治療は食べられるなら抗生剤、ユナシン点滴かクラビット+フラジールの内服です(ST合剤+フラジールのレジメもあり)。再発をり返すこともあります。

腹膜垂炎(脂肪垂炎)

腹膜垂炎は結腸ヒモに接して漿膜に囲まれた脂肪垂が捻れることで虚血、炎症を生じる病態です。脂肪垂炎、結腸垂炎とも称されています。肥満男性に多いと云われています。腹痛で発症しますが限局的な圧痛で腹膜刺激症状や吐き気などの消化器症状が乏しく、重症感が少なく殆どが自然治癒します。上記の特徴が虫垂炎憩室炎との鑑別に有用です。エコーでは壁肥厚を認めない結腸に接して中心低エコー、周囲髙エコーの卵形腫瘤の所見を呈します。CTでは嚢胞状の腫瘤の中心に点状の濃度の高い構造が特徴とされています。捻転した腹膜垂とその中央の静脈内血栓と解されています。痛みに対する鎮痛薬内服の対症療法で臨床的には問題ありません。

虚血性腸炎

典型的には突然の吐き気を伴う左下腹部痛とそれに引き続く下痢、血便です。女性に圧倒的に多く、夜間から早朝に発症することが多いのも特徴です。エコーでは圧痛部の左側大腸の低エコー壁肥厚所見を認めます。右側大腸壁にも肥厚所見をを認める場合はO-157カンピロバクタ腸炎も疑います。内視鏡的には結腸紐に一致した腸粘膜びらん、または潰瘍性病変として発症するため、病変は縦走傾向を呈します。細菌感染症ではなく一過性の腸管壁虚血が原因ですので(静脈側での虚血が関与していると考えられています)多くは保存的に治癒しますが、腸管壁虚血の原因が不明で、再発をり返すこともあります。

サイトメガロウイルス腸炎

CMVはヘルペス科のDNAウイルスでヒト以外には感染しませんのでヒトが唯一の感染源です。熱に弱く細胞外では不安定でヒトからヒトヘの伝播では濃厚な接触が必要です。わが国では小児期までの不顕性感染が多く、終生持続感染します。思春期以降に初感染した場合は伝染性単核球症を発症します。発熱、肝機能異常、肝脾腫、異型リンパ球出現などを呈します。持続感染の様式は慢性感染と潜伏感染があります。慢性感染は感染性ウイルスが持続的に産生される状態で症状はありませんが、唾液等にウイルスを排出します。潜伏感染はウイルスゲノムが骨髄由来の単球、顆粒球前駆細胞に潜伏して存在するが、感染性のウイルスは産生されない状態です。宿主の免疫力の低下により再活性化します。CMV腸炎は宿主の免疫力の低下により血管内皮細胞でCMVが再活性化増殖して炎症細胞と血管内皮細胞の巨細胞化により血管内腔が狭小化して粘膜に虚血変化をきたして潰瘍が生じるとされています。潰瘍性大腸炎に合併するCMV腸炎は既存の潰瘍にCMVが二次的に感染する機序も考えられています。宿主の免疫力の低下の原因は免疫不全を呈する疾患やステロイド、抗がん剤、免疫抑制剤の使用が多いですが、意識障害や腎不全、術後等の全身状態の悪化例など相対的な免疫不全状態でもCMV腸炎発症例がみられることにも注意が必要です。発熱、下痢、腹痛、血便、体重減少、貧血、低蛋白血症等を呈します。内視鏡所見は終末回腸や右側結腸に好発する打ち抜き様潰瘍が最も特徴的は所見とされていますが、それ以外にも全大腸の多彩な部位に非特異的な内視鏡像を呈します。打ち抜き様潰瘍は境界明瞭な円形の断崖状に下掘れする潰瘍で、潰瘍の中にさらに深い潰瘍を認める二段潰瘍も特徴的ですが、浅い不整形の潰瘍や、潰瘍形成のないアフタやびらんのみの所見等多彩な病変の報告があります。CMV腸炎の診断は潰瘍底など病変部位の生検で、血管内皮や間質に特徴的な病理組織像を確認します。ウイルス感染細胞の核にふくろうの目に似た巨細胞封入体が観察されますが陽性率が低いです。CMVモノクローナル抗体を用いた免疫組織学的染色では細胞質のCMVも検出されるため感度が上昇します。

虫垂炎

腹部の緊急手術の約半数を占める疾患です。リンパ組織の肥厚や糞石、時に腫瘍や異物で虫垂の内腔が閉塞することによって発症します。内科外来受診者の問診では20人に1人ぐらいは虫垂炎の手術歴があるくらいにとても一般的は疾患です。症状は典型例では半日から2日間程度の間に①食欲低下、②だんだん増悪する間歇的な心窩部痛、③悪心、嘔吐、④痛みが右下腹部に移動、⑤発熱が①から⑤の順番に出現します(有名な教科書、コープの急性腹症にも記載されています)。②の心窩部痛を自覚せずに食欲低下、悪心嘔吐の後に右下腹部痛で発症する場合もあります。時には急激に進行して穿孔による突然の腹痛で発症したり、逆に慢性の経過で巨大な腫大虫垂炎で診断されることもあり、非典型例にも注意が必要です。一般的には発症2から3日も経過すると虫垂穿孔することが多いです。穿孔により虫垂の強い緊満が解除され、それまでの痛みが少し改善された後に高熱や激しい持続性の痛みが増強してくる場合は汎発性腹膜炎に陥っている可能性が高く、迅速で適切な治療がなされない場合は敗血症から死にいたる危険が高いです。穿孔はしたが虫垂穿孔部周囲が腸間膜や盲腸、回腸等の臓器で覆われている場合は限局的膿瘍形成に至ります。虫垂周囲が炎症性に肥厚して一塊となり隔壁はあるが膿瘍形成に至らない場合は蜂窩織性と称します。早期の虫垂切除術は避けて膿瘍があれば可能なら経皮的なドレナージを施行して、抗生剤治療を優先します。

サルモネラ腸炎

腸管内で菌が増殖して下痢が主体の腸炎を起こす場合と、腸管粘膜から菌が侵入してリンパ濾胞内で増殖後菌血症から全身症状を呈する場合があります。鶏卵や鶏肉、犬や亀などのペットを介した感染も知られています。潜伏期は二日前後とやや短いです、発熱、水様下痢、腹痛等症状を呈します。カンピロバクタ腸炎と比べて血便の頻度は低いですが、高熱となることも多く、細菌性腸炎の中では最も重症です。病変部位は終末回腸が高頻度で直腸病変は低頻度(感染性腸炎ではカンピロバクタを除き一般的に直腸病変は軽微です、rectal sparing)、また連続性病変も低率です。これらの点でカンピロバクタに比してサルモネラ腸炎は潰瘍性大腸炎との鑑別は比較的容易です。O157は高熱は少ないが、血便が多いこと、粘膜所見もびらん、浮腫、出血の程度が強いこと等がサルモネラとの鑑別点です。

エルシニア腸炎

豚肉や犬、猫、鼠、鳥類、魚介類などから経口的に感染します。潜伏期間は1から10日です。小腸内で増殖し、組織侵入性でリンパ組織に親和性があり、パイエル板や孤立リンパ小節などのリンパ組織に侵入して増殖します。その後リンパ行性に拡がり腸間膜リンパ節炎を起こします。症状は右下腹部痛が多いです。下痢はあっても軽度であり血便は稀です。内視鏡所見は終末回腸のパイエル板の腫大、びらんと多発アフタ、回盲弁の腫大、アフタ、盲腸から上行結腸のアフタが特徴的です(チフス性疾患ではアフタではなく下掘れ傾向の潰瘍を呈することが鑑別点です)。CT所見も回盲部のリンパ節腫大と終末回腸の壁肥厚所見です。生検組織検査では著明なリンパ球浸潤やリンパ濾胞の増生、過形成がみられ、中心に好中球浸潤と壊死、膿瘍化も伴います、類上皮肉芽腫の形成も特徴的でCrohn病との鑑別を要することもあります(中心に膿瘍化を伴う肉芽腫はネコ引っかき病のリンパ節病変と類似しています)。時にリンパ腫との鑑別が困難な場合があります。診断は便からの菌の検出が重要ですが低温での長時間の培養が必要で、低温増菌法も併用します。生検組織を用いた培養も有用とされています。

カンピロバクタ腸炎

細菌性腸炎のなかで最も頻度の高い腸炎です。鶏、豚、牛などの腸管内に常在しており、汚染され加熱不十分な鶏肉などの経口摂取で感染します。潜伏期間は10日に及ぶこともあり他の細菌に比して長いです。発熱、倦怠感が下痢や血便に約一日先行することがしばしばあり特徴的です。稀に続発症として反応性関節炎やギランバレ症候群を発症することがあります。ギランバレはカンピロバクタ腸炎の0.1%以下の発症ですがギランバレ全体の30%はカンピロバクタ腸炎に続発します。ガルウイングの形のグラム陰性桿菌で便グラム染色で診断可能です。直腸を含む大腸全域に散在性またはびまん性に発赤、浮腫、出血、びらん、潰瘍などの炎症所見を認めます、回盲弁上の浅い潰瘍はもっとも特徴的な所見で40%に認めます。サルモネラエルシニア腸炎でも認めることがあり特異的ではありませんが潰瘍治癒が遷延する特徴があります。終末回腸にも炎症所見を認めることがあります(直腸はカンピロバクタ腸炎で、終末回腸はサルモネラで病変を認める頻度が高いです)。重症例に対してマクロライド系抗生剤の内服治療をします。

アメーバ性大腸炎

アメーバ原虫感染症で嚢子の経口感染症です。嚢子は小腸で脱嚢して栄養型となり、盲腸で成熟、分裂、増殖します。便とともにS状結腸、直腸で停滞します。ですから病変分布は盲腸と直腸に多いです。栄養型は偽足を出して組織を融解、粘膜内に侵入、壊死して、びらん、不整、多彩な形態の潰瘍を形成します。周囲に紅うん、出血、隆起を伴うことも多いですが、明らかな縦走、輪状傾向はありません。介在粘膜に異常を認めないことが特徴とされています。診断は潰瘍底の白苔や粘液を採取して赤血球を貪食した栄養型を顕微鏡で確認するか、病理組織でPAS染色を追加して壊死、脱落した粘膜表層部や粘液、滲出物のなかに栄養型を確認します。全数把握対象の5類感染症に指定されていますので、診断後7日以内に最寄の保健所長を経由して都道府県知事に報告します。第一選択薬剤はフラジール内服ですが重症例では静注法も保健収載されています。嚢子には効果が乏しいので感染を繰り返す場合はパロモマイシン内服します。

Clostridium difficile感染症

菌交代現象により異常増殖した当該菌が産生する毒素によって発症します、すべての抗生剤が原因となりえます。抗がん剤が原因のこともあります。典型的には下痢、発熱を呈します。病変はたいてい大腸全体にみられますが直腸からS状結腸が主な病変部位です。偽膜形成は約半数の症例で認めます。抗菌薬一週間程度での発症が多いが開始翌日でもありうるし、投与終了後8週間までは発症リスクがあるとされます。治療は抗菌薬の中止で改善がなければフラジール内服が第一選択です。重症例ではバンコマイシン内服です。不応例ではバンコマイシン内服、注腸、フラジール点滴を組み合わせます。

腸管出血性大腸菌腸炎

ベロ毒素産生能をもつ下痢原性大腸菌の代表が血清型O157大腸菌です。少量の菌量で感染が成立し、二次感染の危険も高いです。牛などの反芻動物の腸管に生息しています。感染経路は経口感染で保育所や家庭内での人からヒトヘの二次感染も特徴です。潜伏期間は5日前後です。微熱に続いて一日以内に悪心、嘔吐、下痢、腹痛等の消化器症状が出現します。2日目に血便が出現することが多いです、血液そのもの鮮血便が特徴的です。血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、脳症などの重篤な合併症をひきおこすことがあります。菌体抗原の検出キットやベロ毒素検出酵素免疫測定法もありますが、症状出現早期の内視鏡下吸引腸液の培養も菌の検出率が高いです。血清中O157菌体成分抗体の検出キットも市販されています。内視鏡所見は他の感染性腸炎同様直腸の病変は軽く、また深部の腸管病変も非連続性病変で、健常粘膜が介在します。虚血性腸炎類似の縦走潰瘍を認めることもありますが、病変の主座が右側結腸であることが鑑別点です(虚血性腸炎に比して経過も緩除です)。大腸炎ですので終末回腸には病変は認めないことが多いです。全周性の著明な発赤、びらん、浮腫を認めます、抗生物質起因性出血性大腸炎とは盲腸にも病変を認めることが多いこと、腸管浮腫も強く、進展性も不良でハウストラも消失することで鑑別します。

抗生物質起因性出血性大腸炎

主にペニシリン系抗生剤の服用後、突発的に頻回の血性下痢と腹痛をきたす疾患です。抗生剤の服用中止により速やかに症状は改善し、ほぼ一週間以内に痕跡を残さずに治癒する予後良好な疾患です。病変は区域性で上行結腸から下行結腸に多く、盲腸と直腸には病変は見られないことが多いです(アメーバ性大腸炎では盲腸と直腸に病変が多いです)。粘膜内出血をきたすことが多く、内視鏡ではびまん性の表在性の鮮やかな発赤、浮腫として認められます。浮腫も腸管出血性大腸菌腸炎と比べると軽度のことが多く、またびらんや潰瘍も認めても軽度のことが多いです。腸管の進展性も良好でハウストラの消失もみられません。抗生剤の服用中止により速やかに症状は改善し、ほぼ一週間以内に瘢痕を残さずに治癒します。虚血性腸炎とは浮腫の程度が軽いこと、抗生剤の服用歴の問診で鑑別します。中年女性に多い疾患です。発熱も軽度で全身状態も良好のことが多いです。

ジアルジア症

Giardia lambliaによる人獣共通の腸管感染症でウシ、ヒツジ、イヌなどの哺乳類に寄生し糞口感染により伝播します。診断後直ちに届出が必要な4類感染症です。潜伏期間は1から3週です。発症から2から4週以内は急性ジアルジア症と言い、上部小腸を中心とした粘膜障害を来たすと水様便、腹痛、腹部膨満を認め、無治療では慢性化して過敏性腸症候群様の慢性下痢や吸収不良症候群を呈することがあります。内視鏡所見は十二指腸のリンパ濾胞過形成による黄白色の微小隆起や厚い粘液付着、アフタや周囲隆起を伴う小発赤、粘膜の顆粒状変化などが報告されていますが異常所見を認めないことが多いです。診断は検鏡による原虫の証明で激しい下痢の場合は栄養体が観察されますが、有形便や軟便程度では嚢子を探します。一週間程度のメトロニダゾール内服が有効です。

直腸カルチノイド

消化管カルチノイドの部位別発生頻度は日本では直腸約40%、胃約25%、十二指腸約20%の順です。直腸カルチノイドは表面平滑、可動性の粘膜下腫瘤です。粘膜深層の腺底部から発生して、粘膜下層深部へ発育するとともに粘膜表面へも進展するため、腫瘍径が小さいうちから粘膜面に所見を認めることが多いです。立ち上がりは急峻であることが多く、基部にくびれを有することもあります。黄色調の色調が特徴とされます。表面の血管増生もよくみられる所見です。小さいうちは正常粘膜に覆われて表面平滑であるが、腫瘍の増大とともに頂部に陥凹や潰瘍を呈するようになります。超音波内視鏡で早期の段階では粘膜深部と粘膜下層(第2から3層)に主座を置く境界明瞭な低エコー腫瘤として描出されます。鑑別診断はGIST(Gastrointestinal stromal tumor)で発生頻度が胃約65%、小腸約25%、大腸約5%です。カルチノイドと同様に腫瘍の増大とともに頂部に陥凹や潰瘍を呈するようになります。超音波内視鏡では固有筋層(第4層)由来を確認できます、内部エコーは不均一であることが多いです。

放射線性大腸炎

放射線照射治療が行われる際に照射範囲となる腸管および周囲の組織に生じる有害事象で、臨床上の問題は最終放射線照射から15ヶ月前後におこる血便です。晩期障害といわれます。動脈内膜炎による動脈壁の肥厚により微小循環障害を起こし直腸やS状結腸に粘膜易出血性、白苔を有する潰瘍を生じます。

直腸粘膜脱症候群

粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome:MPS)は粘膜の逸脱による慢性の機械的刺激や虚血変化によって形成される病変の総称です。隆起型、潰瘍型、平坦型に分類され、潰瘍型では歯状線からからやや離れた部位に、隆起型では歯状線に接して発症することが多いです。症状は排便時の出血、粘液分泌、残便感、肛門部痛です。幅広い年齢層にみられるが、やや男性に多いとされます。排便時の過度ないきみの習慣が背景にあるとされています。組織学的には表層部粘膜固有層に毛細血管の増生、拡張、繊維芽細胞や筋細胞の増殖を伴い、さらに深層の粘膜固有層に種々の程度の繊維筋症を認めます。

胃のたこいぼびらん

胃幽門前提部に好発します。びらん周囲の粘膜固有層(腺管と腺管の間、間質)に粘膜筋板から伸びてきた筋繊維が縦に走るため、びらん周囲の再生粘膜が隆起します。たこの吸盤に似ていることから名づけられました。中心の陥凹は発赤調で白苔を伴うこともあるが蚕食像などの悪性所見は認めません。

ピロリ菌未感染胃がん

ピロリ菌未感染胃がんの頻度は1%前後と考えられています。

低分化型などのほかの組織型を伴わない印環細胞がんのみで構成されるがんでその特徴は①胃底腺と幽門腺の境界領域(胃角部を中心に胃体下部から前庭部の全周)に好発する、②内視鏡の色調は褪色調、③肉眼形態は平坦型、④腫瘍径が小さい粘膜内がん、です。特に粘膜内がんが大半であることが大きな特徴です。ピロリ感染の印環細胞がんに比して細胞増殖能が低いと考えられています。多くの病変が粘膜の中層、もしくは中層から上層にかけて発育し、全層性に発育するものは少ないことが知られています。しかし粘膜深層に未分化成分を混じるようになると浸潤も出現するようになると考えられています。

その他の組織型として胃底腺型胃がんがあります。細胞のムチンコア蛋白に対する免疫組織染色検査で細胞形質の発現が分類されますが、正常胃底腺粘膜は表層から順に腺窩上皮(MUC5AC陽性)、頚部粘液腺(MUC6陽性)、胃底腺(表層は壁細胞優位でH+/K+-ATPase陽性、深部では主細胞優位でペプシノゲンⅠ陽性)から構成されますが、胃底腺型胃がんでは免疫染色で胃底腺マーカー(壁細胞H+/K+-ATPase、主細胞ペプシノゲンⅠ)が陽性となる腫瘍と定義されています。頚部粘液腺マーカーのMUC6も陽性となることから、頚部粘液腺から発生、分化する未熟な主細胞から成る腫瘍と考えられています。表層部は非腫瘍性の腺窩上皮(MUC5AC陽性)で覆われていますので、表層部に腫瘍の露出がなく、①内視鏡的には腫瘍性変化に乏しく粘膜下層に厚みがある平坦粘膜、②褪色ないし白色の色調、③拡張進展した血管が表面を走行することが特徴と考えられています。

その他、噴門部がんやバレット上皮に由来することが病理学的に証明困難な食道胃接合部がんもピロリ菌未感染胃に出現することがあり、酸逆流関連が示唆されています。

胃粘膜下腫瘍

粘膜下腫瘍は消化管内視鏡用語集によれば「粘膜より深部に存在する壁内病変により粘膜が挙上された隆起の総称」で、必ずしも腫瘍性病変を示す用語ではなく異所性に迷入した膵組織である迷入膵や炎症性病変である炎症性繊維状ポリープ、上皮性のNET(カルチノイド等)なども含まれます。GISTは胃腸の筋層に存在するカハールの介在細胞という胃腸の運動に重要な機能を持つ細胞への分化を示す腫瘍で発生場所は胃が約65%、小腸が約25%、大腸が5%前後と知られています。腫瘍内に出血、壊死、のう胞変性をきたせばCTでは低吸収域として、超音波内視鏡所見では筋層を主座とする不均一な低から等エコー腫瘍として描出されます。管腔内より壁外に発育することが多く、また2cm以上に増大すると腫瘍の粘膜頂部に潰瘍が出現するようになります。神経鞘腫は消化管の間葉系腫瘍の5%前後を占め胃に発生することが最も多いです(70%前後)。固有筋層内の神経叢から発生するとされています。CTでは境界明瞭な卵形の管内及び管外発育を示す粘膜下腫瘍として描出されます。腫瘍内に出血、壊死、のう胞変性をきたさないことがGISTとの鑑別点です。造影パターンは均一で、平衡相へ漸増型の造影効果を認めます。超音波内視鏡所見は筋層由来の低エコー腫瘤として描出されます。グロームス腫瘍は毛細血管の動静脈吻合叢の神経筋装置に由来すると考えられています。消化管では胃の中でも前提部に好発し、女性に多いです。CTでは小さな石灰化を認めることがあります。造影検査では早期から腫瘍全体が血管と同程度に強く濃染されます。超音波内視鏡では粘膜下層から筋層にかけて境界明瞭な不均一な低から髙エコー腫瘍として描出されます。迷入膵は頂部に開口部を認めることが多く、前庭部に好発して、CTでは境界が不明瞭、超音波内視鏡では粘膜下層を主座とする内部にのう胞状や導管構造、点上髙エコーを含む低エコー腫瘤として描出されます。胃体部に認めるものは筋層に浸潤して前庭部のものよりも大きなものが多いです。胃の炎症性繊維状ポリープは前庭部に好発する粘膜深層ないし粘膜筋板周囲の、繊維芽細胞や繊維細胞の反応性の増殖を示す腫瘤で、好酸球やリンパ球などの炎症細胞浸潤を伴います。超音波内視鏡では粘膜から粘膜下層にかけて境界不明瞭は均一な低エコー腫瘤として描出されます。

胃黄色腫(キサントーマ)

胃黄色腫(キサントーマ)は泡沫状のマクロファージが粘膜固有層に限局的に集簇したもので内視鏡像は境界明瞭な黄色調の平坦からわずかに隆起する病変で、星芒状から類円形の形態が多いです。大きさは数mmから1cm程度です。細顆粒状の表面構造を呈します。ピロリ菌感染慢性胃炎あるいは既感染の高度の萎縮性粘膜に認められることが多く、その発生にピロリ菌の関与があるものと考えられています。黄色腫のある胃粘膜は胃癌発生のハイリスクと考えられてもいます。黄色腫の悪性化例の報告はありませんが、泡沫状マクロファージは印環細胞がんと鑑別が難しいことがありますので、生検部位が黄色腫の並存あるいは近接する病変の場合はその旨を病理医に伝える必要があります。PAS染色が鑑別に有用です。

胃カルチノイド

本邦の胃癌取り扱い規約第15版によれば内分泌細胞癌、リンパ球浸潤癌胃底腺型胃癌等とともに悪性上皮性腫瘍の特殊型に分類されています。カルチノイド腫瘍と内分泌細胞癌は異型度が違うだけではなく、発生、腫瘍細胞の特性、分化の種類が異なると考えられています。胃カルチノイドの多くはECL(enterochromafin-like)細胞に由来し、持続的な髙ガストリン血症によるECL細胞の過剰増殖が本腫瘍の発症に関与すると考えられています。この内分泌細胞は腺底部に存在するため、カルチノイド腫瘍は粘膜深層から発生し粘膜下腫瘍の形態を呈することが多い上皮性腫瘍です。一方、内分泌細胞癌は先行した粘膜内髙、中分化型腺癌の癌腺管深部に腺癌細胞の脱分化により出現した増殖能の高い腫瘍性内分泌細胞の塊状増殖により、腺内分泌細胞癌を経て形成される場合が最も多いとされています。

胃カルチノイド腫瘍はRindiらの分類では背景病変によって①TypeⅠ:自己免疫性胃炎(A型胃炎)に伴い発症するもの、②TypeⅡ:多発性内分泌腺腫瘍(multiple endocrine neoplasia:MEN)-1型およびZollinger-Ellison症候群に合併するもの、③TypeⅢ:高ガストリン血症や特異的胃炎を背景とせず散発的に発生するものの3群に分けられて、予後と相関するとされています。そして内分泌細胞癌を髙悪性度内分泌腫瘍として別個に位置づけています。

胃カルチノイド腫瘍の内視鏡的特徴は腫瘍が小さいときにはやや平坦な隆起性病変ですが、大きくなると前述のように表面が平滑な粘膜下腫瘍様の隆起です。やや黄色調で、表面に拡張した血管を伴います。腫瘍径が大きくなると、頂部に陥凹やびらん、潰瘍が形成され腫瘍が露出しますので、表面構造は消失して細く密ならせん状血管と太く拡張した黒褐色の血管が不規則に樹枝状に分岐します。

カルチノイドの診断には内分泌マーカーの免疫組織化学染色が用いられます。chromograninA染色は特異的ですが感度が低く、synaptophysin染色は逆に感度が高いですが特異度は低いです。悪性度指標のひとつに細胞分裂像やKi67免疫染色指数による細胞増殖能判定があります。

自己免疫性胃炎

抗胃壁細胞抗体や抗内因子抗体などの自己免疫機序により、胃体部を中心とした胃底腺領域にびまん性の慢性炎症を引き起こして萎縮性変化を来たします。壁細胞の破壊により高度の低酸状態となりますのでD細胞からの抑制が解除されて、前庭部の炎症を免れたG細胞からのガストリン分泌が増加、髙ガストリン血症をきたしてECL(enterochromafin-like)細胞が刺激され、ヒスタミン放出が促進されます。しかし壁細胞からの酸分泌は亢進しませんのでガストリンの刺激が持続してECL細胞は内分泌細胞過形成(endocrine cell hyperplasia:ECH)を来たし、その過形成からさらに内分泌細胞微小胞巣(endocrine cell micronest:ECM)が形成されて、胃カルチノイド腫瘍や胃がんの発生に関与するとされています。抗内因子抗体により内因子の分泌が低下してビタミンB12の吸収が阻害されると悪性貧血も来たします。低酸から鉄吸収障害により鉄欠乏性貧血を合併したり、経過中にⅠ型糖尿病、自己免疫性甲状腺疾患を併発することもあります。ピロリ菌による慢性胃炎では慢性炎症が幽門腺領域から始まり前庭部中心に萎縮を来たすことと対称的に自己免疫性胃炎では幽門腺領域に萎縮が起こりませんので逆萎縮パターンと称されています。また自己免疫性胃炎による胃体部の萎縮は粘膜の中層以下の胃底腺の破壊によるもので、病初期には表層の腺窩上皮には炎症の影響が少なく表面の粘膜模様に萎縮性変化が及び難いとされています。

萎縮性胃炎

胃にピロリ菌が感染すると胃粘膜の表層部にある腺窩上皮細胞に好中球を主とする炎症細胞が浸潤して急性胃炎が生じます。感染後経過で炎症が持続しますとリンパ球や形質細胞が浸潤する慢性炎症所見を認めるようになります。胃粘膜表層部ではピロリ菌感染に対する直接的な反応で好中球浸潤も持続します。この状態が慢性活動性胃炎です。粘膜の障害が持続すると胃粘膜か萎縮します。萎縮とは細胞の数が減少して臓器や組織が小さくなることです。胃粘膜の場合は胃粘膜腺管の密度が低下して、粘膜の高さが低くなります。慢性萎縮性胃炎では同時に腸上皮化生と幽門腺化生も出現します。腸上皮化生は完全型と不完全型に分類されます。完全型腸上皮化生は腺管全体が小腸型の腺管(吸収上皮細胞と杯細胞、パネート細胞)に置換されます。不完全型腸上皮化生は胃腸混合型腸上皮化生とも云われ、胃固有の上皮(腺窩上皮細胞や幽門腺細胞)に腸型の細胞が混在します。幽門腺化生とは胃底腺粘膜が障害されて本来の胃底腺腺管の細胞が(主細胞や壁細胞)が頚部粘液腺細胞(副細胞)に置換される所見です。頚部粘液腺過形成とも云われます。

好酸球性胃腸炎

①粘膜、粘膜下層優位型(粘膜病変を主として、内視鏡所見は粘膜面の発赤、びらん、浮腫等です、胃では潰瘍病変が、大腸では微細顆粒状粘膜が特異的は所見のひとつとされています)、②筋層優位型(筋層病変を主として、胃壁や腸管壁の肥厚や閉塞をきたします)、③漿膜下層優位型(漿膜下病変を主として漿膜肥厚や好酸球性腹水を認めます)。①の病型が好酸球性胃腸炎の約半数を占めます、②は約30%、③は約20%を占めます。組織学的には上皮に好酸球浸潤を認め、あるいは粘膜固有層に高倍率1視野あたり20個以上の好酸球の浸潤を認めることが特徴とされています。好酸球増多症候群、セリアック病、薬剤起因性消化管障害、好酸球性多発血管性肉芽腫、寄生虫疾患、炎症性腸疾患等を鑑別します。症状は嘔吐、下痢、腹痛等の消化管症状が慢性的に持続します。40歳代の男女ほぼ同数に好発します。既往歴は半数でアレルギー疾患があり、中でも喘息が多いです。血液検査でも好酸球増多を認めます。CTでは胃や腸管壁の肥厚所見を認めます。

胃MALTリンパ腫

本来胃粘膜にはリンパ組織はありません。胃粘膜にあるリンパ装置、胚中心を有したリンパ濾胞のことをMALTといいます。刺激に対する免疫反応として新たにリンパ組織が形成されたと考えられています。その原因の主なものがピロリ菌です。胃粘膜の細胞は殺菌作用のある胃酸を分泌していますので、通常の細菌などではリンパ組織を作って戦うほどの必要がありません。胃酸に抵抗性で胃粘膜に住み着いたピロリ菌に対して免疫反応としてリンパ濾胞を形成します。反応性に形成されたリンパ濾胞の辺縁帯から濾胞間領域にかけて存在する節外性B細胞への分化を示す腫瘍をMALTリンパ腫といいます。LEL所見を呈することもあります。形質細胞への分化を示す場合は(約30%)細胞の軽鎖拘束性のモノクロナリティーも認めます。この概念は1983年にロンドン大学の病理学者P.Isacson教授によって提唱されました。MALTリンパ腫はピロリ菌の除菌にて治癒するものが多い一方で、MALTリンパ腫は胚中心への浸潤増殖を示すものがあります。そこで大細胞性リンパ腫へ形質転換するものがあります。こうなると除菌治療ではMALTリンパ腫は治りません。

胃粘膜下異所性腺管

胃粘膜下異所性腺管は、本来胃粘膜固有層にあるべき胃腺組織がのう胞状に拡張して、粘膜下層に存在する状態です。局所的に存在する場合と、びまん性に散在する状態もあります。成因として、胃粘膜の持続する炎症により、胃粘膜のびらんと再生が繰り返される過程で胃腺管組織が粘膜筋板の欠損部から粘膜下層に入り込んだと考えられています。多くはピロリ菌感染に起因する慢性炎症に惹起されるとされています。B-2再建幽門側胃切除の術後胃吻合部に時に発生するgastritis cystica profunnda も同様の機序で発生すると考えられています。胃粘膜下異所性腺管がびまん性に散在する胃には高頻度に胃癌が発生することが知られています。胃癌のハイリスク粘膜としてより詳細な胃粘膜観察を要すると云われていますが、異所性胃腺の癌化は稀とされています。胃粘膜下異所性腺管の診断にも超音波内視鏡検査は有用で、粘膜下層にのう胞状病変が特徴的です。

胃のリンパ球浸潤癌

リンパ球浸潤癌は「胃癌取り扱い規約第15版」によれば、癌細胞が、著明なリンパ球浸潤を背景にして、充実性あるいは腺腔形成の明らかでない小胞巣状に増殖する低分化癌であり、胚中心を伴ったリンパ濾胞の増生も特徴的である、粘膜内病変は分化型であることが多い、と定義されています。胃癌全体の約10%の頻度と報告されることが多いです。比較的若い男性の、噴門部から胃体上部にかけて好発し、脈管浸潤が少なく予後も比較的良好とされています。カルチノイドや内分泌細胞癌、胃底腺型胃癌、未分化癌等とともに悪性上皮性腫瘍の特殊型に分類されています。リンパ球浸潤癌では約90%以上の高率でEBウイルスの感染が認められます。この組織型を特徴付ける著明なリンパ球浸潤は病変深部の低分化腺癌の分布する範囲に認められ腫瘍と周囲組織との境界は明瞭で、さらに同部には繊維化が乏しいことも特徴とされています。これらの腫瘍増殖形態の反映として粘膜下腫瘍様の所見を呈するが病変は比較的軟らかく周囲粘膜の引きつれを生じることも少ないです。病変露出部の発赤が目立つことも特徴とされています。また同時性及び異時性多発が比較的多いとの報告もなされています。超音波内視鏡検査でも著明なリンパ球浸潤と繊維化の少ない病理組織学的特徴の反映として病変下に低エコー領域を認めることが多いです。

胃梅毒

梅毒は近年大流行し社会的問題となっています。梅毒トレポネーマが全身に血行播種される第二期に菌体とその代謝産物に対する血管アレルギーにより手掌皮疹等多彩な皮膚病変が生じますが稀には消化管にも病変が出現することがあります。胃は消化管の中でも梅毒病変の好発部位です、その他直腸や口腔咽頭病変の報告も散見されます。胃梅毒は心窩部痛で徐々に発症することが多いです。内視鏡所見の特徴は①幽門前庭部に幽門輪部に及ぶ、②全周性で癒合傾向のある不整形の多発潰瘍、びらんです。③潰瘍周囲の介在粘膜は浮腫状の凹凸不整隆起となり易出血性です。④梅毒トレポネーマが全身に血行散布される第二期に菌体とその代謝産物に対する血管アレルギーにより稀には皮膚病変と似た胃粘膜疹が胃体部にも形成されることがあります。幽門前庭部に潰瘍やびらん性病変を生じる生じる他疾患には1)胃癌、2)リンパ腫、3)急性胃粘膜病変、4)サイトメガロウイルス(CMV)胃炎等がありますが、④の胃体部の第二期梅毒に特徴的な皮疹に類似した特異的な粘膜疹の有無が胃梅毒との鑑別点です。病理組織像は粘膜固有層に強い形質細胞浸潤を認めます。確定診断は特殊染色で組織内スピロヘータの証明です。

前庭部に潰瘍やびらん性病変を生じる他疾患との鑑別は1)胃癌は潰瘍は単発のことが多く、高度の進展不良を伴いますが幽門輪部にまで病変が及ぶことは少ないです、2)リンパ腫は潰瘍は多発しますが散在性で小さなものが多く、介在粘膜は梅毒に比して隆起傾向が強いです、3)薬剤などによる急性胃粘膜病変は急性に発症して症状も強く潰瘍面には凝血塊や黒苔を伴い十二指腸にも浮腫状変化を有することが多いです、4)サイトメガロウイルス(CMV)胃炎は地図状の潰瘍が多発しますが幽門輪にまで及ぶことは少なく、また潰瘍辺縁は比較的明瞭で周囲の介在粘膜には異常を認めないことが多いです。

GIST

Gastrointestinal stromal tumor(GIST)は消化管原発の間葉系腫瘍の中で発生頻度が最も高く、部位別発生頻度は胃が最も多く約65%、小腸が約25%、大腸(殆どは直腸)が約5%と報告されています。GISTは膨張性発育型の粘膜下腫瘍の形態を示すことが多いです。発育形態は消化管の内腔に突出して発育する壁内発育型、管外に発育する壁外型、両方からなる混合型に分類されます。壁内型は消化管内腔に増大して潰瘍形成による出血から吐血や血便をきたして発見の契機となることもありますが、壁外性に発育すると自覚症状にも乏しく他疾患のCTや症音波検査などで偶然に発見されることが多いです。診断には免疫組織学的染色でc-kit遺伝子産物(c-KIT)やCD34陽性を確認します。悪性度は腫瘍径と核分裂の数でリスクを評価しますが腫瘍の発生部位でも予後が異なることが報告されています。GISTは胃腸の筋層に存在するカハールの介在細胞という胃腸の運動に重要な機能を持つ細胞への分化を示す腫瘍でc-kitの遺伝子の突然変異がGISTの発生に深く関わっていると考えられています。内視鏡所見は表面平滑で比較的広基性の粘膜下腫瘍で粘膜表面の血管拡張を認めたり、腫瘍径の増大に伴い頂部に糜爛や潰瘍を形成したりします。超音波内視鏡所見ではGISTは筋層(第4層)と連続する低エコーで境界明瞭な腫瘍像として描出されます。内部エコーは小さな病変では比較的均一であるが、大きなものになると不均一で、壊死を反映した無エコーや出血を反映した髙エコーをモザイク状に認めることもあります。リンパ節転移の頻度はきわめて低いので、外科的切除に際して通常はリンパ節郭清はなされません。

腸上皮化性

腸上皮化生はピロリ菌感染などにより胃粘膜上皮がびらんと再生を繰り返すうちに腸管粘膜上皮の形態に変化した状態です。環境への適応反応と考えられています。腸上皮化生は細胞組成から完全型と不完全型に分類されています。完全型は吸収上皮と杯細胞、パネート細胞から成り、刷子縁様構造を伴い小腸粘膜と同じ形態と構造を持ちます。不完全型はパネート細胞を欠き胃と腸の細胞が混在する胃腸混合型の腸上皮化生と考えられています。腸上皮化生はピロリ除菌後でも観察され長期間にわたり残存します。腸上皮化生の内視鏡的所見としての典型像は前庭部を中心に散在する灰白色の扁平隆起ですが、除菌後の粘膜の特徴的な所見である地図状発赤も腸上皮化生であることが多いです。

食道乳頭腫

食道重層扁平上皮由来の良性腫瘍で、血管を有する間質と重層扁平上皮の乳頭状増殖からなります。大きさは殆どが1cm以下で下部食道に多いが、上部や中部食道にも見つかります。病因として逆流性食道炎の合併が多いことから、食道炎に関係していると考えられています。食道乳頭腫による症状はなく、内視鏡検査時に偶然発見されることが殆どです。若年者から高齢者まで幅広い年齢層で見られます。性差も認めません。内視鏡所見は多くは白色調の小隆起性病変で、近接で観察すると粒状、房状の隆起が集簇する構造を認めます。発赤調の桑実状を呈する病変もあります。乳頭腫の癌化を示唆する報告は非常に稀で基本的には治療の必要性はありません。

食道のグリコーゲン・アカントーシス

グリコーゲン・アカントーシスはグリコーゲンを含む扁平上皮の過形成です。中年男性に多く症状をきたすことはありません。中部食道に多発する類円形の2から10mm前後の大きさの平板状の隆起です。上部消化管内視鏡検査の10%前後の頻度で認められます。病因は不明ですが逆流性食道炎との関連性が示唆されています。病理組織像では明るく豊富な細胞質を有する有棘細胞層の増生を伴う粘膜上皮の肥厚性変化です。異常に多発する場合はCowden病を鑑別します。内視鏡所見は多発する半透明の白色調平板状小隆起で、表面に微細顆粒を認めます。ヨード染色では境界明瞭な褐色調の濃染像を呈し内部に点状の不染が観察されます。拡大観察では増生した有棘細胞による粘膜上皮の肥厚性変化による血管透見不良を認めます。

食道異所性胃粘膜島

異所性胃粘膜は食道や十二指腸、メッケル憩室内にみられます。食道の異所性胃粘膜は上部食道が高頻度で、胃カメラ検査の10%前後に認めると報告されていることが多いです。食道入口部の島状の胃粘膜は食道異所性胃粘膜島と称されています。胎生期に円柱上皮に覆われていた食道粘膜が中部食道から上下方向に扁平上皮に置換されていく際に、何らかの機序で円柱上皮が取り残されたものと考えられています。幽門腺粘膜、胃底腺粘膜、それらが混在した粘膜など種々の組織型を認めます。多くは無症状で疾病との関連の報告も稀ですが、嚥下時痛や咽頭違和感などの症状が異所性胃粘膜内の壁細胞からの酸分泌の影響と解される場合もあります。内視鏡的には異所性胃粘膜は上部食道や食道胃接合部に多く認め、胃と同様の発赤面で境界明瞭で周囲に白色の縁取りが特徴的です。類円形、楕円形、その他さまざまな形態があります。食道異所性胃粘膜島は左右対に認めることが多いです。拡大観察では胃と同様の縞状や類円形の腺上皮の表面模様が認められます。食道扁平上皮がんでは腺上皮は観察されず扁平上皮下乳頭内血管(IPCL)の異常が確認されますので、異所性胃粘膜と鑑別が可能です。また食道異所性胃粘膜島は左右対に認めることが多いことも食道扁平上皮がんとの鑑別点となります。

食道顆粒細胞腫

顆粒細胞腫は筋原性やGISTのマーカーとして知られるCD34、c-kitは陰性で神経系マーカーであるS100に陽性を示すことから末梢神経組織、特にシュワン細胞由来の腫瘍と考えられています。消化管に発生する顆粒細胞腫のうち、約1/3が食道発生で、好発は下部、中部食道です。食道顆粒細胞腫は中年男性に多くみられ、大部分は20mm以下の良性腫瘍です。腫瘍細胞はN/C比は低く、細胞質は細顆粒状でやや好酸性で濃く、核は楕円状を示します。内視鏡像は立ち上がりの境界が明瞭な白色調から黄色調の隆起性病変で楕円形から縦長で、腫瘍頂部が浅く陥凹して臼歯状と表現されることが多いです。上皮直下に存在する粘膜下腫瘍の形態を呈します。腫瘍頂部で上皮が薄くなっているので同部を生検すれば容易に上皮下の腫瘍部を採取できます。これを要するに食道顆粒細胞腫は粘膜下に発生する好酸性の豊かな細胞質を有する細胞からなる境界明瞭な均一、充実性の腫瘍です。

バレット食道

食道胃接合部は内視鏡的には、胃粘膜の縦走襞と食道側は棚状血管を、各々の上端、下端の指標にします。組織学的には食道下部の粘膜固有層の径100μm以上の粘膜に平行して縦走する静脈を、食道下部にのみ認められる血管として指標にします。バレット食道とは食道胃接合部の食道側が胃から連続する粘膜で覆われた状態、食道の扁平上皮が胃から連続した円柱上皮で置換された状態のことです。組織学的には①円柱上皮内に扁平上皮が島状に残存していること(扁平上皮島)、②円柱上皮粘膜層に食道腺の導管を認めるか粘膜下層に食道腺を認める、③粘膜固有層に粘膜筋板の二重構造を認める、④粘膜固有層に棚状血管を認めることをバレット食道の判定に指標としています。バレット食道にみられる腺上皮には胃底腺型上皮、噴門腺型上皮、不完全型腸上皮化生に類似した上皮があります。同部に発生する腺癌の特徴として扁平上皮下を比較的広く進展しやすいとが挙げられています。

特発性食道破裂

食道破裂によって縦隔気腫に至り、保存的に診療できる可能性もあるが、縦隔炎から膿瘍形成にて重篤な状態に陥る危険性のある疾患です。特に飲酒後の嘔吐を契機として急激に発症した上腹部痛、胸痛、廃部痛などを訴える場合は可能性が高まります。積極的に疑い胸部CTで食道壁外の空気の貯留、食道壁の肥厚や断裂、胸水貯留(左側が多い)の有無を確認します。

特発性縦隔気腫は肺胞が破裂して起こります。特発性食道破裂はより重篤になり得ます。

好酸球性食道炎

胸やけや嚥下障害症状で、原因は食物抗原のよる食道粘膜局所の免疫反応と考えられています。内視鏡所見は中部から下部食道にかけて縦走する多発性の縦走溝、縦走溝に沿った白斑、輪状溝、気管様狭窄です。半数以上の症例でCTや超音波内視鏡で食道壁の肥厚所見を認めるとされています。織学的な特徴は食道粘膜上皮内への高倍率視野につき15個以上の著名な好酸球浸潤です。上皮の表層優位の集簇巣や上皮内微小膿瘍(内視鏡所見の白斑に相当するとされています)を形成します。その他好酸球の脱顆粒がみられる、粘膜基底細胞層の反応性過形成がある、粘膜乳頭の延長がある、粘膜固有層の繊維化がみられる、などの所見も認められます。40から50歳代の男性に好発します。ピロリ感染者では好酸球性食道炎が少ないことが複数の観察研究で示されています。ピロリ感染者の減少が最近の好酸球性食道炎が増加している原因のひとつとも考えられています。

膵のう胞性腫瘍

膵管内乳頭粘液性腫瘍、IPMN(intraductal papillary mucinous neoplasm)は偶然発見される上皮性腫瘍性膵のう胞のなかで最も多いとされます。高齢男性の膵頭部や体部に好発します。多くは多房性で共通の皮膜を有さず、ぶどうの房状の形態を呈します。主膵管と交通があります、主膵管径は拡張していることも拡張していないこともあります。悪性を強く疑う所見は①閉塞性黄疸を伴う膵頭部ののう胞性病変、②造影される5mm以上の充実性成分、③主膵管径≧10mmが、また悪性の可能性がある所見は①のう胞径≧3cm、②造影される壁肥厚、③主膵管径5~9mm、④5mm未満の壁在結節、⑤尾側に閉塞性膵炎を伴う主膵管狭窄等が挙げられます。そのため、のう胞径≧3cmや主膵管径5~9mm等悪性の可能性のある所見を認める場合には、超音波内視鏡検査で壁在結節やその造影効果の有無を検索します。IPMNは同時性、異時性に通常型膵癌を合併する頻度が高く、IPMNの癌化だけではなく、通常型膵癌の合併にも注意が必要です。IPMN悪性の可能性のある所見を認めない場合でも通常型膵癌合併検索のための超音波内視鏡検査の合理性も検討されています。

 

粘液性のう胞腫瘍、MCN(Mucinous cystic neoplasm)は紡錘状細胞が比較的密に増生する卵巣様間質を有し、粘液を産生する上皮で構成される類円形の、のう胞性腫瘍で、中年女性の膵体尾部に好発します。次に記載するSCNと比べると頻度は低いです。のう胞全体を包むやや厚い繊維性被膜を有し内腔に凸の、のう胞内のう胞を有するオレンジのような形態が特徴です。隔壁で分かれたのう胞腔は各々独立していて、交通はありません。造影にて遅延性の濃染を示します。被膜や隔壁には石灰化を伴うことがあります(卵殻様石灰化)。また主膵管との交通も認めません。耐術性症例では原則手術適応と考えられています。

 

漿液性のう胞腫瘍、SCN(Serous cystic neoplasm)は中年女性に好発します。微小のう胞の集簇であるmicrocystic type が典型例です。微小のう胞の集簇は蜂巣状構造(honeycomb appearance)と形容されますが、のう胞間隔壁は造影剤で早期濃染します。中心部が繊維化、石灰化することによる星茫状の瘢痕(central stellate scar)や中心石灰化(sun-burst appearance)が見られることもあります。主膵管との交通は認めません。良性のことが多く原則経過観察します。

 

充実性偽乳頭状腫瘍、SPN(Sorid-pseudopapillary neoplasm)は若年女性に好発する低悪性度の腫瘍です。結合性の弱い多形成(分化方向が不明、免疫組織化学検査では細胞質や核にCD10やβ-カテニンが陽性)腫瘍細胞が微細な血管間質を取り囲み充実性に増生する腫瘍で、しばしばのう胞変性や出血を伴います。割面は繊維性偽被膜の中に、充実性の部分と出血と泥状液体貯留の混在した偽のう胞部分が混在していることが多いです。膵外側に膨張性に発育する境界明瞭な球状腫瘤で、内部は充実性部分とのう胞状部分が不均一に混じり、充実性部分は漸増性の造影効果を示すことが多いです。また腫瘍辺縁や内部に粗大な石灰化を伴うことがあります。主膵管との交通は認めません。大部分が良性に近い生物学的態度を示します。

 

膵神経内分泌腫瘍のうちのう胞成分を伴うcystic PNET(cystic pancreatic neuro-endocrine tumor)は膵尾部に好発します。類円形腫瘍のなかにのう胞部分を伴い、辺縁の充実性部分は造影で早期濃染を示します。のう胞部分は単房性で大きなものでは出血を伴うこともあります。石灰化はみられません、主膵管との交通も認めません。膵内分泌腫瘍は核分裂数(少なくとも高倍率視野を50視野以上検討し、10髙倍率視野当たりの核分裂数)ないしKi67指数による細胞増殖能(最も核の指標率が高い領域で500から1000個の腫瘍細胞に占めるMIB-1抗体の陽性率)をもってNET G1(核分裂数が<2個/10HPFないしKi-67指数が≦2%)、NETG2(核分裂数が2から20個/10HPFないしKi-67指数が3から20%)、NEC(核分裂数が>20個/10HPFないしKi-67指数が>20%)にグレード分類されます。

胆嚢壁が肥厚する病気

胆のう腺筋症(adenomyomatosis of the gallbladder:ADM)は組織学的に胆のう壁内のRokitansky-Aschoff sinus(RAS)(オーストリアとドイツの病理学者の名前が付けられた構造物で、粘膜がポケット状に陥入して筋層や漿膜下に達したもの、胆石等で胆嚢内圧が高まった状態が持続することによって次第に発達していくと考えられています)の増生と筋繊維組織の肥厚、粘膜上皮の過形成を認める胆のう壁の肥厚性病変です。わが国では胆のう壁1cm内にRASが5個以上増生し、壁が3mm以上に肥厚したもの、という診断基準が一般的に用いられています。90%以上に胆石を合併します。病変の広がりによって底部型、分節型、びまん型に分類されています。エコーでRASを示唆する無エコー領域、壁内結石であるkomet like echoが描出されることがADMに特徴的です。腫瘍性病変との鑑別のためCTやMRCP等にて粘膜面が比較的整であること、漿膜や外壁層が周りの臓器との境界が保たれているとこを確認いたします。

慢性胆嚢炎は胆石が原因で細菌感染をきたし、慢性炎症にて胆のう壁肥厚をきたしたものです。胆のう壁の肥厚は全周性で比較的均一な層構造もエコー等で確認できることが多いです。結石以外にも血管炎や自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患も慢性炎症の原因となることがあります。組織学的には粘膜の萎縮、胆のう壁の繊維化を認めます。肥厚した壁内には筋層内や外壁や漿膜下に達するRASがみられます。ADMとは外科的摘出標本でRASの頻度や平滑筋増生の有無を組織学的に鑑別します。

膵管胆管合流異常症では、合流形態の異常により胆道内に膵液の逆流が生じるために慢性刺激に伴い胆のう粘膜に過形成変化をきたします。過形成粘膜は上皮が肥厚して細胞増殖活性が亢進しており、過形成から異型性、さらにはがんに至る機序があると考えられていますので、胆石を認めない全周性壁肥厚所見では、MRCP検査で合流異常が疑われる場合はERCP等更なる検査も必要とされています。

黄色肉芽腫性胆嚢炎は胆石などで胆のう内圧の上昇とそれに付随する何らかの原因による上皮損傷をきたして、RASの破綻や粘膜潰瘍から胆汁が胆のう壁間質に漏出して組織反応が生じた結果と考えられています。多くの組織球が胆汁中の資質を貪食して局所に堆積して異物型多核巨細胞も出現して肉芽腫を形成します。そして炎症の消退や繊維化などを繰り返して次第に胆のう壁は肥厚すると考えられています。また周囲組織への病変の波及が不整かつ比較的顕著に認められることが多いです。病変の進行、消退と繊維化が慢性に経過することが周囲との境界を不規則にする原因と思われます。腫瘍性病変とは粘膜面が整で連続性が保たれていることで鑑別しますが診断が困難なことも多いです。

胆石

成人の1割程度に胆石が認められます。そのうち年率1から4%に症状を呈します。胆石を持っている人の多くは生涯無症状ですごされますが、一度腹痛等症状を呈するようになると、胆嚢炎や膵炎などの合併症の出現率も有意に多くなります。合併症の確立された予防法もないのが現状です。40歳代の中年女性、肥満、多産がリスクとなりますが、若年男性で、胆石症の家族歴がある場合は遺伝性球状赤血球症の可能性も考えて脾腫の有無も検索します。

 

さて、半年前から、夜睡眠中に時々、発汗が多くなって脈拍も速くなりそして目を覚ますことがあったが、そのような発作は30分ほどで治まっていた、と有名な教科書「急性腹症の早期診断」の著者にして外科医のコープ卿は88歳の時の自身の経験を、その教科書に症例報告風に記述しています。ある朝7時ごろに朝食を摂ったがその後、正午前に激しい心窩部痛に襲われて全く食欲を失いベッドに入った。私は痛みの原因は何だろうと考え、初めは冠動脈疾患かと思ったが脈拍は全く正常でこの診断を支持する徴候はなかった。次に腹部に注意を向けた。左と右の腸骨部を触診したが異常は全くなかった。しかし驚いたことには右季肋部を触診すると胆のうはゴルフボールほどの大きさに丸く緊満して固く触れたが痛みや圧痛はなかった。圧痛がなかったため、急性胆のう炎の診断名は全く頭に浮かばなかった。横になっているうちに心窩部の痛みは和らぎ少しうとうとした。午後の遅くに目を覚ますと大変驚いたことには今度はもはや腹部のどこにも先ほど確認した腫脹や腫瘤は消えていた。しかし、午後の9時ごろ右季肋部に痛みと圧痛が再び始まった、微熱もあり、今度は急性胆のう炎と確信した、手術が行われ結石とともに一部はすでに壊死に陥った胆のうが摘出された。この経験から、私は急性胆のう炎について次のことを学んだ。①初発症状は心窩部痛の場合があること、②最初の徴候は腫脹した胆のうであるが、圧痛はない場合があること、③何らかの理由で胆のうから内容物が排出されて腫脹と疼痛が消失する場合があること、④その後胆のう炎を発症すると痛みは右季肋部に感じるようになること、⑤この二度目の疼痛は明らかに腹膜刺激によるものであり、急性虫垂炎において痛みが内臓痛から体性痛に変わるに従い痛みが心窩部から右下腹部に移るのに似ている。夜間に発汗と脈拍数が増加した発作が胆石に関連していたかどうかは私にはわからないが、手術以来同様の発作は二度と起こらなかったことは意味深い。結局私は「学ぶのに年をとりすぎたということはない」(セネカ)という格言が真実であることを学んだのである、と88歳のコープ卿は結んでいます。

黄色肉芽腫性胆嚢炎

胆嚢壁と他の消化管の壁構造との違いは胆嚢壁には粘膜筋板が無いことと、Rokitansky-Aschoff sinus(RAS)が有ることです。RASはオーストリアとドイツの病理学者の名前が付けられた構造物で、粘膜がポケット状に陥入して筋層や漿膜下に達したもので、胆石などで胆嚢内圧が高まった状態が持続することによって次第に発達していくと考えられています。肉芽腫形成は、結石などで胆嚢内圧の上昇とそれに付随する何らかの原因によるRASの上皮損傷で胆汁が胆のう壁間質に染み出して組織反応が生じた結果と考えられています。胆汁中の脂質を貪食した多くの組織球(泡沫組織球)が局所に堆積して異物型多核巨細胞も出現して肉芽腫を形成します。コレステロールを含む胆汁中の脂質の色調を反映して黄色に見えます。そして炎症の消退や繊維化などを繰り返して次第に胆のう壁は黄白調に肥厚すると考えられています。また周囲組織への病変の波及が不整かつ比較的顕著に認められることが多いです。病変の進行、消退と繊維化が慢性に経過することが周囲との境界を不規則にする原因と思われます。

十二指腸炎症性隆起

十二指腸粘膜に炎症が生じると発赤や浮腫、点状出血、びらんや絨毛の萎縮を生じて、再生性変化としてブルンネル腺の過形成、胃上皮化生を来たすと、なだらかな立ち上がりの隆起性変化が形成されることがあります。十二指腸炎症性隆起は球部に多発する小隆起として認めることが多く、色調はやや発赤を呈して、隆起の表面にびらんや微細顆粒を伴うものもあります。胃上皮化生を伴うと十二指腸粘膜に通常認められる絨毛様構造を呈さずに、胃腺窩上皮に類似した粘膜模様を認めることもあります。多発している場合は腫瘍性病変との鑑別は比較的容易ですが、単発の場合や十二指腸下行脚に認める場合は腺種との鑑別が困難のこともあります。

ブルンネル腺過形成

ブルンネル腺は十二指腸粘膜深層から粘膜下層に存在する外分泌腺です。十二指腸球部で特に発達しています、肛門側では減少傾向です。過形成は正常のブルンネル腺と比較しても異型のない腺組織の増殖性変化で、平滑筋隔壁により分葉構造を呈するブルンネル腺の結節性増生から形成されます。内視鏡所見は球部に好発する無径性あるいは有径性の粘膜下腫瘍の形態が特徴的です。約1割程度に腺開口部を認めます。腺種(良性腫瘍)との鑑別が困難なことも多く経過観察が望ましいです。表面は絨毛様構造を呈しますが胃化生を伴うと腺窩上皮類似の所見も認めます。

セリアック病

遺伝的素因を背景に、グルテンの経口摂取にて腸粘膜の免疫反応が生じて消化器症状が主に出現する自己免疫性疾患です。グルテンとは小麦に含有される植物性蛋白の総称でその分画であるグリアジンは消化酵素に分解されにくい特定のペプチド配列の形で上部小腸粘膜を通過、自然免疫及び獲得免疫が誘導されて炎症反応を引き起こし、粘膜固有層は障害されて粘膜上皮内に炎症細胞浸潤と粘膜萎縮を生じます。臨牀症状は小児では離乳期から2歳までの発症が多く、下痢や嘔吐、腹満、吸収不良による成長障害が、その後の低身長、貧血等を惹起します。成人では40歳までに診断される場合が多いですが、高齢になるまで診断されないこともあります。慢性の下痢、低蛋白血症、鉄欠乏性貧血、骨粗しょう症、失調性の神経症状などを呈します。Ⅰ型糖尿病や甲状腺疾患等他の自己免疫性疾患の合併頻度も高いです。内視鏡所見は小腸や十二指腸のKerckring皺壁の消失と絨毛の萎縮やそれに伴うモザイク状粘膜です。組織学的所見は小腸や十二指腸粘膜の上皮内リンパ球浸潤、粘膜萎縮、絨毛消失、上皮細胞のアポトーシス、陰窩過形成等です。腫瘍の合併も多く中でも空腸の腸管型T細胞リンパ腫の頻度が高く、60歳代で診断されることが多いです。

ウィップル病

Tropheryma whippei(グラム陽性桿菌)の感染による全身性疾患です。主要な臨牀症状は関節痛、体重減少、下痢、腹痛の4つです。十二指腸から空腸にかけて菌体が吸収上皮細胞内に侵入するので吸収不良症候群を呈します(小腸粘膜固有層へのマクロファージの充満と腸間膜リンパ節の腫脹による脂肪の輸送障害も吸収不良に関与していると考えられています)。脂肪吸収障害は抗菌薬治療後2週間程度で改善します。約半数で神経症状も認めます。血液検査では貧血、低アルブミン血症、低コレステロール血症を認めます。内視鏡検査では十二指腸から空腸にかけてびまん性の粘膜の浮腫やKerckring皺壁の腫大、肥大した白色絨毛が特徴的な所見です。診断は粘膜病変の生検でPAS染色陽性の泡沫細胞を確認してTropheryma whippeiDNAをPCRで同定します(非結核性抗酸菌症では好酸菌染色で好酸性マクロファージの細胞質内に紅染する多数の好酸菌が確認されること、ウィップル病では脂肪滴を認めることが両者の鑑別点です)。電子顕微鏡で粘膜固有層及びマクロファージ内に桿菌様小体を証明します。比較的長期間の抗菌薬治療が推奨されています。

家族性地中海熱

周期性発熱症候群のひとつで診断基準の臨牀症状必須項目は12から72時間続く38℃以上の発熱を三回以上繰り返すことです。発熱時にはCRPや血清アミロイドA(SAA)などの急性期蛋白の増加を伴いますが、発熱は自然寛解し、また発熱間歇期には無症状で炎症検査所見も消失します。発症年齢は20歳以下が90%を占めます。月経やストレスが発作の誘因となります。誘因がIL-6の増加を来たすことに起因する自己免疫性疾患と解されています。発熱に伴う随伴症状は漿膜炎、滑膜炎が多く、胸膜による胸痛、腹膜炎に伴う腹痛や下痢、腹水や腹膜刺激症状を来たします。炎症の主座は漿膜側ですが十二指腸や小腸、結腸の粘膜面にも浮腫や結節状変化、地図状の浅い潰瘍や瘢痕等多彩な病変を呈するとのいくつかの報告もあります。滑膜炎は膝関節、足関節などの下肢の単関節痛を来たします。他にも心膜炎、無菌性髄膜炎、丹毒様紅班などの補助項目があります。稀な疾患のため診断が遅れることがありますが、繰り返す発熱発作とAAアミロイドーシス(腎不全を招来します)の合併予防が、発熱や随伴症状の改善とともに主たる治療目標となります。

薬剤関連性消化管病変

食道病変では急に発症する胸やけや嚥下痛、胸痛症状で、テトラサイクリン等の抗生剤(多彩な形態の潰瘍)、骨粗鬆症治療剤(地図状びらん、潰瘍、粘膜剥離)、抗凝固剤(白色膜様物付着、白色粘膜)が代表的な原因薬剤です。上部消化管ではアスピリンやNSAIDsでは不顕性の出血による貧血に注意します(前庭部に多発傾向の地図状多形性の多彩な形態の潰瘍)。りん吸着剤による胃前庭部や十二指腸の白色顆粒粘膜の病的意義は不明の点が多いです(組織学的には粘膜固有層間質の組織球、類上皮細胞の集簇で、胞体内に顆粒状から針状の種々の形態を呈する赤褐色調の沈着物を認めます、走査電顕で胞体内の物質は炭酸ランタンとりんの存在が確認されています)。NSAIDsによる腸病変は潰瘍型(背景粘膜は正常でdiscrete ulcerを呈します)と腸炎型に大別されます。小腸病変は潰瘍型が主体でびらん、小潰瘍、縦走潰瘍、輪状潰瘍など規則性のない多彩な病変が特徴です。大腸病変は潰瘍型は回盲部付近の深部大腸に多発します。稀に膜様狭窄を伴います。腸炎型は下痢、血便など症状を伴うことが多く、右半結腸に出血性ないしアフタ性大腸炎を呈します。コラーゲン大腸炎は女性に多く大腸上皮直下に沈着した膠原線維帯、リンパ球浸潤が特徴で顆粒状変化、左側結腸のひび割れ所見、慢性下痢を呈します。PPIやNSAIDS、チクロピジンの関与が報告されています。腸間膜静脈硬化症(静脈の石灰化と上皮の変性、粘膜固有層の膠原線維沈着)は長期服用のある種漢方薬成分の右側結腸から吸収時の影響が考えられています。ある種の降圧剤による吸収不良症候群はcollagenous sprueとして2012年に報告された新しい概念です。慢性下痢、体重減少、正球性正色素性貧血、低アルブミン血症、尿AG陰性を呈し、十二指腸や小腸絨毛の萎縮、顆粒状小隆起、上皮直下の肥厚した膠原線維束、粘膜固有層の慢性炎症性細胞浸潤を認めます。

消化管アミロイドーシス

繊維構造をもつ不溶性蛋白であるアミロイドが臓器に沈着することによって引き起こされる障害です。消化管、特に小腸は心臓、腎臓とともにアミロイド蛋白の沈着が最も多い臓器です。消化管に沈着するのは①AA、②AL、③Aβ2M、④ATTRの4種類のアミロイド蛋白ですが主に①②の二つです。①AAアミロイドーシスは関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に合併します。IL-6受容体抗体製剤等による治療成績の改善により減少傾向が示されています。炎症関連蛋白の代謝産物であるAAアミロイド蛋白は消化管の粘膜固有層と粘膜下層血管周囲に顆粒状に沈着します。慢性下痢、低栄養、粘膜の脆弱化に伴う粘膜出血による貧血等の症状を呈します。十二指腸や小腸の内視鏡所見は微細顆粒状隆起や粗雑な顆粒状粘膜ですが、沈着が高度になると血管狭小化による循環障害を生来して、絨毛の萎縮やびらん、潰瘍や易出血性の脆弱な粘膜像を呈します。大腸病変は顆粒状粘膜が主な所見ですが大腸は小腸に比べるとアミロイド蛋白の沈着が少なく典型的な所見に乏しいです。②ALアミロイドーシスは全身性と局所性の二つの病態があります。全身性は多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症に伴う骨髄腫性ALアミロイドーシスと合併病変のない原発性ALアミロイドーシスに分類されます。他方局所性のアミロイドーシスは消化管のみに沈着し、腫瘤を呈して局在する場合と消化管に比較的広範に沈着する病変を呈するものの2型があります。消化管限局性アミロイドーシスは予後良好な症例が報告されており、治療方針決定のため全身性との鑑別が重要です。免疫グロブリン軽鎖を前駆蛋白とするALアミロイド蛋白は血管壁の親和性が高く、粘膜筋板、粘膜下層及び固有筋層への塊状沈着を来たします。蠕動運動機能が低下し病期の進行に伴いイレウス症状が出現して慢性偽閉塞状態を呈します。十二指腸や小腸の内視鏡所見は多発性の粘膜下腫瘍様隆起とびまん性のkerckring皺壁の肥厚像が特徴的です。粘膜下腫瘍様隆起は黄白色調を呈します。沈着が粘膜固有層にも高度になると微細顆粒状、びらん、易出血性所見を呈してAAアミロイドーシスと同様の所見を認めます。大腸所見は粘膜下腫瘍様隆起と半月ひだの肥厚像です。さらには顆粒状粘膜面、びらん、潰瘍、易出血性、虚血性病変として粘膜下血腫を認めることがあります。

消化管生検のGroup分類

胃癌取り扱い規約第15版

Group1 は正常組織および非腫瘍性病変

Group2は腫瘍性(腺腫または癌)か非腫瘍性か判断の困難な病変

Group3は腺腫(良性腫瘍)

Group4は腫瘍と判断される病変のうち、癌が疑われる病変

Group5は癌

 

大腸癌取り扱い規約第8判

Group1 は正常粘膜および炎症性粘膜や過形成結節

Group2は腫瘍性(腺腫、腺癌)か非腫瘍性か判断が困難な病変

Group3は細胞異型および構造異型の点で幅のある病変が含まれる、良性腫瘍など

Group4は癌を疑うが確定できないもの

Group5は癌

 

腹痛をきたす婦人科疾患

破裂性子宮外妊娠

3大大量腹腔内出血の原因の1つ(他は肝細胞癌破裂、腹腔動脈瘤破裂)

骨盤腹膜炎

骨盤腹膜炎は発熱はあるが下痢や嘔気、嘔吐などの消化器症状を伴わない持続する下腹部痛が主症状です。淋菌とクラミジア・トラコマティスが主な起炎菌ですが、淋菌のほうが重症となります。虫垂炎を鑑別します。虫垂炎と比べると消化器症状が無い、高熱である、圧痛範囲が広い傾向があります。卵管卵巣膿瘍に至れば手術的排膿が必要です。肝周囲炎は主にクラミジア・トラコマティスによる骨盤腹膜炎が肝皮膜に波及したものです。右季肋部痛が主な初発症状です(肝周囲炎を発症した時点で骨盤腹膜炎は寛解していることが多いです)。右側胸部や右肩から頚部にかけての痛みも伴いますが、稀には右僧帽筋稜の痛みで発症することもあります。痛みは持続的で、深吸気、仰臥位、右側臥位で悪化することが多いです。

卵巣捻転

卵巣捻転は突発する下腹部痛あるいは背部痛です。悪心、嘔吐を伴うこともあり右側の尿管結石が鑑別疾患です(若い女性の尿管結石は卵巣捻転じゃなかろうか、高齢者のそれは腹部大動脈瘤破裂ではなかろうか、尿管結石の隘路です)。5cm程度の腫瘍や嚢胞が捻転のリスクです。

破裂性卵巣のう胞

破裂性卵巣のう胞は夜の物理的刺激にて突発する持続性の下腹部痛です。出血ですので消化器症状は無く腹膜刺激症状があります。

破裂性チョコレートのう胞

破裂性チョコレートのう胞は自然破裂が多いです。子宮内膜症の病歴として月経困難症があり、発症は生理の時期が多いです。

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